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逃亡。

 ……恥ずかしい。  死んでしまいたいほど恥ずかしい。  羞恥がセシルを襲う。当然カールトン卿の顔を見られないセシルは、彼から手を離すと毛布の中に頭を突っ込み、丸くなった。  しかし、彼から逃れることはとても困難だ。そのことはセシル本人が一番よく知っている。なぜなら、彼はとても世話焼きだからだ。 「そうか、それはよかった……セシル?」  突然亀のように首を引っ込めるセシルに疑問をおぼえたカールトン卿は毛布をめくり上げた。そうなると自分を守るものが消える。 「っ、ひゃ!」  セシルは短い悲鳴を上げ、降りかかる絶望を噛みしめる。もうどうしていいのか判らない。セシルはおろおろするばかりだ。――そんな時だった。誰かがこの部屋のドアをノックした。思い当たる人物は一人しかいない。カールトン卿の母親、イブリンだ。 (助かった……)  セシルは彼に気取られないよう、詰まらせていた息をほっと吐き出した。  カールトン卿が返事をすると、室内に入ってきたのはやはりイブリンだった。 「まあ、セシル。よかったわ、ぐっすり眠れたのね」  はしばみ色をしたその目が優しく微笑みかけてくれる。今のセシルにとって、イブリンは救いの神だ。彼女の登場で起き抜けから動揺しっぱなしのセシルの心が穏やかになっていく。  とにかく、カールトン卿といると心臓がいくつあっても足りない。セシルの心は乱れるばかりだ。  今はカールトン卿から離れたい。  居たたまれなくなったセシルはベッドから抜け出すため、腰を上げた。 「イブリン。ごきげんよ……っひゃ!!」  イブリンへ移動しようとすると、突然セシルの身体が後ろ手に引っ張られた。これに驚いたセシルは、この短時間で三度にもなる短い悲鳴を上げた。

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