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決定事項。
果たしてイブリンはカールトン卿に何の同意を求めたのだろう。彼の腕に包まれていることを意識してしまうと思考が追い着かない。
イブリンとの編み物は決まって彼女の部屋かリビングだ。だからてっきり部屋を移動するものだと思っていた。けれども今、この状態では動くに動けない。
「もしかして、ここで編むんですか?」
セシルはおずおずと目の前にいるイブリンに尋ねた。すると空かさずカールトン卿が口を開いた。
「ぼくがここにいるのは不服かい?」
不服ではない。自分がこのような立場にあること自体おこがましい。けれども、こうやって後ろから抱き締められているとどうにも気分が落ち着かない。
せめて腰にまわっているこの腕だけでも解いてほしい。
セシルは胸の内で叫ぶ。しかし、よくしてもらっている彼にそのような薄情なことが言えるわけがない。
――昨夜だって、セシルの疼く身体を解決してくれたのは彼だ。それもセシルが用を足すその箇所に直に触れて、である。
(だめ。思い出しちゃだめだ)
昨夜の出来事が頭に過ぎりはじめると、また身体が疼く。もしそんな状況にでもなれば、イブリンと編み物どころではなくなる。
「そんな……ことは……ありません」
昨夜のカールトン卿との出来事が頭に浮かんでは追い払い、浮かんでは追い払い。カールトン卿にしてもらったあれこれを頭から追い出し続けるセシルはやっとのことでそう口にする。
どうやらカールトン卿は微笑を浮かべたようだ。彼の甘いその息がセシルの旋毛に触れた。そうなると、またもやおかしな声が口から飛び出しそうになった。セシルは慌てて唇を閉ざす。
「じゃあ、はじめましょうか。セシル、お腹が空いたら言ってちょうだいね、すぐに夕食の用意をするわ」
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