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えっと、覚えてないです。
ⅩⅢ
カールトン卿とイブリンの献身的な看病のおかげでセシルの身体はすっかり癒えた。
それから後もカールトン卿の一挙一動がセシルを困らせた。そんな日々がさらに四日ほど続いた頃。今は焼けるような赤い夕日が沈みかけている。セシルは突然イブリンに呼ばれた。何事かと彼女の部屋へ向かえば、イブリンは満面の笑みを浮かべて立っている。
その彼女が手にしているのは男性用の白地を基調としたチュニック。それから黒地のジレとキュロットに、裾にレースが施された白のドレス風のジュストコールだ。
「まあ、可愛らしいわね。でもセシルの場合、どちらかというとジュストコールよりもドレスの方が似合うかもしれないわ」
「えっと、あの……これは……」
イブリンから手渡され、着てみたものの、なぜだろう。よそ行きの洋服のように思えて仕方がない。
そこでまたひとつ気になったのは、今、イブリンが着ているドレスだ。いつもならグレイッシュトーンのハイネックドレスを身にまとっているのに、今夜の彼女は華やかなミスティーピンクのドレス姿だった。裾のところどころに散りばめられたレースがまた可愛らしく、清楚な雰囲気を醸し出している。
(これって、どういうこと?)
セシルが困惑していると、やがてカールトン卿も姿を現した。
彼は引き締まった肉体美に白のチュニックを着こなし、さらにはダークブルーのキュロットとジュストコールがその身を引き締めて美しいシルエットを作り出していた。
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