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いざ、パーティー会場へ。
今夜の彼もまた一段と凛々しい。まるで月下の騎士のようだ。
思わずため息を付きそうになる。
その美しい彼もまた、イブリンと同じく正装をしている。
これはいったいどういうことだろう。
セシルが首を傾げていると、カールトン卿は眉を潜めた。
「まさか君は今夜パーティーに行くという約束事を忘れたのか?」
「えっ?」
約束とはいったい何のことだろうか。
カールトン卿と交わした約束事に覚えがないセシルは首を傾げるばかりだ。
それに業を煮やした彼はふたたび口を開いた。
「本当に覚えていないのか? 一週間前の夜、君は親戚が開催するパーティーに出席すると頷いてくれただろう?」
「えっ?」
彼のその言葉にセシルは動揺を隠せない。一週間前といえば、カールトン卿と庭先で話したあの時のことだ。
そういえば、たしかそういう約束を交わした気がする……。
けれどもあの時はカールトン卿との初めての口づけで頭がいっぱいになっていた。だからもちろん、セシルはダンスパーティーの話を聞けるはずもない。
「そんなことはないわよね、セシル。さあさあ、グレディオラス卿がお待ちよ。急ぎましょう」
まさかカールトン卿との口づけで聞いていなかったとは言えず、セシルはただただ二人に導かれるまま屋敷を出るのだった。
今夜のためにカールトン卿が馭者を雇ったのだろう。門を出ると立派な馬車があった。中はゆったりくつろげるほど広い。馬車を走らせること三十分ほど。
山道を駆け上がり、やって来たのはカールトン卿の屋敷と同じくらいの大きな規模の屋敷だった。
見晴らしの良い山の頂にそびえ立つ大きな屋敷はお伽噺に出てくる城のようだ。
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