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火種。

 つい先ほどまであたたかだったセシルの心は瞬く間に萎み、今は彼と繋いでいる指がどこか冷たく感じる。セシルの気分は会場に来る以前よりもずっと沈んでしまっていた。 「セシル、ヴィンセント。こっちよ」  ざわめき立つ空間の中、ふいにカールトン卿と自分を呼ぶイブリンの声が聞こえた。  カールトン卿に促されるまま歩いて行くと、そこには美しい花々の模様が散りばめられているハイネックドレスに身をまとった貴婦人がいた。  貴婦人の年齢はイブリンよりも少し上だろうか。白髪なのにまったく年齢を感じさせない彼女もまた、イブリンと同様で活気に満ち溢れた女性のようだ。優しげな目鼻立ちも雰囲気も、二人はとてもよく似ている。  そんな彼女の隣には、先ほど挨拶を交わしたガストンと、それにもう一人。年齢は彼よりもずっと上だろう。ガストンと似た容姿をしている、白髪の男性が立っていた。 「まあまあ、ヴィンセント。よく来てくれたわ。招待状は用意したものの、てっきり来てくれないものと思っていたのよ」 「そうでしょう? この子ったら社交界が苦手で困っているのよ」  貴婦人の言葉に同意したイブリンはカールトン卿に目をやると、本当にお手上げだというくらいに大袈裟なため息をついた。  どうやらカールトン卿の社交パーティー嫌いはとても有名らしいことが窺える。  カールトン卿がわざとらしく肩を窄めると、セシルは苦笑した。 「あら、貴方がセシルね? 想像していたよりもずっと可愛らしいわ」 「えっと……」

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