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居心地。
セシルの脳裏に疑問が過ぎるものの、彼女たちの会話は治まるところを知らず、話が先に進んでいく。
これでは尋ねようにも尋ねられない。
「ああ、サーシャ。そんなことはないわ。ヴィンセントだってそうよ。今でこそ、もう落ち着いたけれどこの子だってわたしをパーティーに連れて行ってくれないのよ?」
ガストンに放たれた火種はカールトン卿に移った。
イブリンは大きな眼をぐるりと回し、サーシャに賛同する。
女性二人にとことんまで追い詰められたカールトン卿とガストンはお手上げ状態だ。互いに顔を見合わせ、肩を縮めるしかない。
サーシャの夫、グレディオラス卿にいたっては、ただただ苦笑を浮かべるばかりだ。どうやら彼らは自分たちに進言する力がないことを知っているらしい。
五人の様子を見ていたセシルは、彼らがどれほどあたたかな家庭を築いているのかをあらためて思い知る。
セシルは唇を引き結び、俯いていた。
弾んだ会話を聞いていると心が沈む。だってここにはセシルの居場所がない。自分の知らない彼らの絆がセシルを苦しめた。
「セシル、どうした? 気分が悪いのか?」
声を掛けられ我に返ったセシルが顔を上げると、そこには心配そうに自分を見下ろすカールトン卿がいた。
そこでセシルは、彼らを妬んでいたことに気が付いた。
ーー自分にはもう両親と呼べる人も、身寄りもない。一人きりだと思うと胸の空く思いがする。
「あの、すみません。僕、人に酔ったみたいで、ちょっと外に出ます」
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