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人攫い。

「何ならこのまま売り飛ばしちまおうか。赤い髪と目をした奴なんて珍しいし、欲しがるコレクターも多いだろう?」  無精ひげの男が腰を上げ、ずっと近くに歩み寄るとセシルを見下ろした。品定めをするようにこちらを見るじっとりとしたその目は威圧的でぎらついている。 (――怖い)  胃の奥から恐怖が込み上げてくる。  セシルはどうにかこの場から逃げる術はないかと身を捩り、縄を解こうと試みる。しかし縄は頑丈に結ばれていてびくともしない。 「足掻いても無駄だぜ? お前が逃げないよう、しっかり結んであるからな」 「お金が目当てなら僕の家にはありません」  込み上げてくる恐怖と戦いながら、セシルは顎を突き出し、震える声を絞り出した。 「……だろうな。ハーキュリーズ家の女共は金遣いが荒いので有名だ。こっちははなっからそんなもんに期待してねぇよ」  主犯格の男はそう言うと、ふたたび腰を下ろす。突き出したセシルの顎を人差し指で持ち上げた。 「ーーでもよ、あの公爵様なら別なんじゃねぇ? お前を囲っているんだろう?」  分厚い唇がにやりと笑う。 「……おう、そうだな。身代金を要求して、とんずらこいた上にコイツを売り飛ばすってのも悪くないか」  他の二人も無精ひげの男に賛同した。  ――冗談ではない。カールトン卿には言葉で言い尽くせないほどの恩義を受けている。これ以上、彼に迷惑は掛けられない。  恐怖で涙が溢れてくる。  しかし今は泣いてはいけない。  カールトン卿に迷惑をかけたくはない。  ただその一心で、セシルは気丈に振る舞うことを決意する。  セシルは込み上げてくる涙も恐怖も抑え込み、三人を睨んだ。  しかし彼らはにやりと不気味に笑うだけだった。 「おっと、そんな目で俺たちを見ても無駄だぜ? 俺たちは人攫いを生業にしている盗賊だ。お前さんなんかちっとも怖くはないね」 「おい、なあでもよ、なんかこいつ。すげぇそそられねぇ?」

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