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恐怖。
三人のうち一人が下卑た笑みを浮かべてそう言った途端、セシルの背中が冷水をかけられたようにぞっとした。
「たしかに、いっぺん襲ってからでも売り飛ばすのは遅くないかもな」
無精ひげの男がセシルの顎から手を離し、舌なめずりをして頷く。
「そうだろう? それに奴隷として扱ってもらうには何でもできるようにしておいた方がいい。そっちの方がずっと高い値段で取引できるだろう?」
「そうだな、男を覚え込ませるのもまた俺たちの醍醐味のひとつだ」
三人はそれぞれに相づちを打った。
『男を覚え込ませる』とはいったい何を指し示すものなのかはセシルには判らない。けれども全身を舐め回すような男たちの視線がさらなる恐怖へと駆り立てる。
そんなセシルを尻目に、男は手にしていたランタンをもう一人に手渡すと、代わりに懐からナイフを取り出した。
セシルの口から短い悲鳴が弾き出る。それも束の間、鋭い切っ先がセシルのジュストコールとジレを餌食にした。左右真っ二つに切り裂かれる。
そうかと思えばまた別の男の手が伸びてきて、セシルが身に着けていたキュロットを引きずり下ろした。
瞬く間に全てを取り除かれたセシルは悲鳴を上げた。脆弱な細身の身体が男たちの目に晒される。
冷たい夜気がセシルの全身を覆った。
「やっ! 嫌だっ!!」
セシルは足をばたつかせるものの、手は縛られたままだ。依然として自由にはならない。しかも唯一自由だった両足さえも伸びてきた二つの腕によって取り押さえられてしまった。
自分はいったいどうなってしまうのだろう。
恐怖がセシルを襲う。
「おい、しっかり照らせよ? 今から俺の楔でこいつを貫いてやるんだからよ」
男はけたけたと笑いながら、ランタンを手にしている仲間に指図する。
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