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優しい人びと。

 イブリンの細いその手が、小刻みに震え続けているセシルの頭を撫でた。 「どうする? 探偵を雇って奴らのあじとを突き止めるか?」  ガストンがカールトン卿に尋ねる。 「いや、誰の差し金かはあらかたの見当は付く」 「あの女か……」  ガストンの言葉に、カールトン卿が大きく頷いた。 「ああ、十中八九、彼女の仕業に間違いないだろう。それよりも今はセシルの方が心配だ」  そこまで言うと、ガストンと話していたカールトン卿は声の調子を変えた。 「セシル、もう大丈夫だ。さあ、屋敷に帰ろう」  優しい声音がセシルを宥める。 「ええ、そうですね。目に見える傷よりも見えない傷の方がよほど重傷です。あの愚か者たちを捕まえるのはそれからでも遅くはありませんからね」  イブリンも大きく頷き、カールトン卿に同意した。 「ヴィンセント、ヴィンセント……」  三人の心遣いが傷ついたセシルの心を癒やしていく……。恐怖から解放されたセシルはたくましいカールトン卿に縋った。

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