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あるひとつの考え。
だって彼はとてもハンサムだ。その彼を女性が放って置くはずがない。
カールトン卿さえその気になれば、好みの女性なんてすぐに探し出せるだろう。
セシルは彼が見知らぬ女性と仲睦まじく語らい合う様子を頭に思い描いた。その時だ。カールトン卿から離れたくないと思っている自分をあらためて自覚した。
カールトン卿の側にいたい。そう思ったのは一度や二度ではない。たしか、盗賊に強姦されそうになった時も彼の側にいたいと願った。
セシルは流れる涙をそのままに、顔を上げる。すると、彼の薄い唇がセシルの旋毛に触れた。まるで母親が我が子を愛おしむかのような素振りだ。
彼はセシルが落ち着くようにと、こうして口づけを落としてくれる。
視線を合わせれば、そこにあるのは吸い込まれそうな澄んだ宇宙が広がるサファイアの瞳だ。
彼の瞳がセシルを写す。美しい彼に見惚れてしまえば、涙は次第に引っ込んでいく……。
何も言えず、そのままじっとしていると、セシルの丸まった背中を撫でていた手がゆっくりと臀部へ下りてきた。
「えっ? なにっ?」
これに驚いたのはセシルだ。彼の手の動きに身体が大きく反応した。
「切れていただろう?」
カールトン卿が左手にあるナイトテーブルの引き出しから取り出したのは、馬油が入った平べったい瓶だ。
傷を癒やす馬油とセシルの腰に触れている彼の右手。それらが指し示すのはただひとつしかない。
そこでセシルは彼が何をしようとしているのかを知った。
「いいです! あの、僕が自分で塗ります!!」
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