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邪魔者。
「君は邪魔ではない」
「……っつ」
(どうしよう。息が、できない)
カールトン卿の側にいたいと願ったのは事実だ。
けれどもあまりの近い距離にセシルの呼吸が浅くなる。
心臓は早鐘を打つように鼓動し、頬も上気してくる。
彼に触れられているというただそれだけで、セシルの身体は恋の思いに胸が戦慄き、震えてしまう。
セシルはどうにか彼の側から離れようと試みるものの、けれども彼の力強い腕がそれを拒む。
(どうかヴィンセントに心臓の音が聞こえませんように!)
セシルはそう祈るばかりだった。
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