2 / 132

2

「……ん」 眉間に皺を寄せ、混濁する意識の中を漂いながら、うっすらと重い瞼を押し上げた。 焦点が定まらずぼんやりとした視界、暫くは何も考えず広がる天井をただ見つめていた。 「……」 幾分かの時が経過した頃、少しずつではあるけれど次第に覚醒してきた脳内。 「……、!!?」 見慣れない天井、辺りを見回してようやく気付く知らない部屋、一気に思考がクリアになり次にはもう飛び起きていた。 「つっ……! 何処だ……ここ……」 まだ微かに痛みを訴えている腹部、そっと手を添えながら整理の行き届いた部屋を見渡した。 「……確か、わけわかんねえ奴に蹴り食らって……それで……その後は……」 微かに揺れるカーテンへと視線を向ければ、隙間からは陽光が射し込んでいた。 「……マジかよ」 知らない内に、すっかり夜が明けていた。 こんな時間になるまで目覚められないような蹴りを食らい、今の今まで眠りに落ちてしまっていたというのだろうか。 違うなら違うと言って欲しい、あまりにも受け入れ難い現実だった。 「……とりあえず、こっから出ねえと……」 そっと足を忍ばせて、扉へと手をかける。 息を殺しながら静かに廊下へと出て見れば、2階らしくすぐ側には階段が待ち構えていた。 「コラコラそろそろ起きろってえ。ったくも~、ホンット寝起きわり~よなあお前って」 「ぐぅ」 「だから寝るなっつの」 家人に悟られないよう慎重に身を乗り出し、階下の様子を窺う。 そこには当たり前だけれど、見知らぬ者が廊下に立っていた。 学ランとブレザーをそれぞれ身に纏っていて、性別は男。 「お前ら早くしやがれ!! ウダウダしてたら遅刻すっぞオイッ!!」 「ありゃ、もうそんな時間?」 「ん~……」 扉を勢い良く開け放ち、新たに出てきた男がもう1人、廊下に出ていた2人を急かす。 矢張り制服姿でブレザーを纏い、2人に比べどちらかと言えば雰囲気の荒い印象を受ける。 「起きるか死ぬかどっちかにしろ」 「起きます」 「お~? 一気に目覚めスッキリ?」 どうやら兄弟らしいが、繰り広げられる光景に限り無く関心がない。 「皆起きたか? 早くしないと遅れるぞ~」 そうしてまた1人、新たな存在が現れる。 廊下に出ていた3人に声をかけながら、顔を覗かせた人物。 ネクタイを締め、きっちりとスーツを着こなし、すらりと伸びた手足と…… 「ああっ!!!!」 はっきりと視界に捉えられなかった昨夜の光景が、この瞬間に自然と蘇っていく。 そうして次の瞬間には、家中へ響き渡るような大声を張り上げていた。

ともだちにシェアしよう!