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「……ん」
眉間に皺を寄せ、混濁する意識の中を漂いながら、うっすらと重い瞼を押し上げた。
焦点が定まらずぼんやりとした視界、暫くは何も考えず広がる天井をただ見つめていた。
「……」
幾分かの時が経過した頃、少しずつではあるけれど次第に覚醒してきた脳内。
「……、!!?」
見慣れない天井、辺りを見回してようやく気付く知らない部屋、一気に思考がクリアになり次にはもう飛び起きていた。
「つっ……! 何処だ……ここ……」
まだ微かに痛みを訴えている腹部、そっと手を添えながら整理の行き届いた部屋を見渡した。
「……確か、わけわかんねえ奴に蹴り食らって……それで……その後は……」
微かに揺れるカーテンへと視線を向ければ、隙間からは陽光が射し込んでいた。
「……マジかよ」
知らない内に、すっかり夜が明けていた。
こんな時間になるまで目覚められないような蹴りを食らい、今の今まで眠りに落ちてしまっていたというのだろうか。
違うなら違うと言って欲しい、あまりにも受け入れ難い現実だった。
「……とりあえず、こっから出ねえと……」
そっと足を忍ばせて、扉へと手をかける。
息を殺しながら静かに廊下へと出て見れば、2階らしくすぐ側には階段が待ち構えていた。
「コラコラそろそろ起きろってえ。ったくも~、ホンット寝起きわり~よなあお前って」
「ぐぅ」
「だから寝るなっつの」
家人に悟られないよう慎重に身を乗り出し、階下の様子を窺う。
そこには当たり前だけれど、見知らぬ者が廊下に立っていた。
学ランとブレザーをそれぞれ身に纏っていて、性別は男。
「お前ら早くしやがれ!! ウダウダしてたら遅刻すっぞオイッ!!」
「ありゃ、もうそんな時間?」
「ん~……」
扉を勢い良く開け放ち、新たに出てきた男がもう1人、廊下に出ていた2人を急かす。
矢張り制服姿でブレザーを纏い、2人に比べどちらかと言えば雰囲気の荒い印象を受ける。
「起きるか死ぬかどっちかにしろ」
「起きます」
「お~? 一気に目覚めスッキリ?」
どうやら兄弟らしいが、繰り広げられる光景に限り無く関心がない。
「皆起きたか? 早くしないと遅れるぞ~」
そうしてまた1人、新たな存在が現れる。
廊下に出ていた3人に声をかけながら、顔を覗かせた人物。
ネクタイを締め、きっちりとスーツを着こなし、すらりと伸びた手足と……
「ああっ!!!!」
はっきりと視界に捉えられなかった昨夜の光景が、この瞬間に自然と蘇っていく。
そうして次の瞬間には、家中へ響き渡るような大声を張り上げていた。
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