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「なんだ? すっげえ声だなしかし!」
「すげえどころの話じゃねえだろ!」
「……ふう、目覚めスッキリ」
「おっ? 起きたのか~! おはよう!」
「……テメエ! どういうつもりだ!!」
声のした方向へと一斉に向けられる視線、それぞれの反応を余所に諸悪の根源と言えば、人の良さそうな笑顔を浮かべながら暢気に挨拶をしてくる始末。
途端に全身を駆け巡る憤り、荒々しく階段を駆け下り胸倉を掴みにかかる。
「ちょ、ちょっと待った! まずは落ち着こう! な? はい深呼吸~っ!」
「うるせえっ!! どういうつもりだって聞いてんだろが!!」
「お、おい! なにやってんだよお前……!」
「あァッ!? テメエにゃ関係ねえだろが!」
「……怖っ」
止めようと割って入ってきた言葉に、射抜くかの様な鋭い睨みを向け黙らせる。
「そ、それはっ……俺の責任だしな、あんな所に放って帰るわけにいかないだろう? いつ誰に襲われてしまうか分からないし……あまりにも危険だ!」
「……親父、さりげなくなんの心配してんだ」
「余計なことしやがって……! 情けでもかけたつもりか!? なんで、……ほっといてくんねえんだ……っ」
言葉が終わりへ向かうにつれて、力を失いハッキリしないものとなる。
得意としている蹴りを容易く受け入れてしまった挙げ句、たったの一発で意識を手離してしまった。
情けをかけ連れ帰ったのかと発してしまったが、実際はただ単に嘲笑いたかったのだろうか。
「父さん、余計なお世話だって」
「……父さん?」
湧き上がる怒りはなかなか消えず、掴んでいた胸倉をガクガクと揺らしていた時に、はたりと気付く。
父さんと、確かに聞いた。
コイツが……?
俺は、……こんな子持ちに負けたっていうのか……
「そ、そうそう! 自己紹介がまだだったな!」
「颯太 、中学生です」
「瑛介 でーっす。常に青春中、17歳っす」
「……この馬鹿。……桐也 だ、高三」
「の、父で秀一 です」
「……そんなこと! どうでもいい! それよりテメエッ!!」
『じゃ、行ってきまーす』
それぞれが名乗り終えたかと思えば、何事もなかったかのようにゾロゾロと家から出て行く学生組。
そして一気に静まり返る玄関で2人、相変わらず噛みつくような瞳で睨みつけ、胸ぐらは掴んだままだった。
「君に危害を加える気はないし、情けやなんだっていう理由で連れ帰ったわけでもない。喧嘩をしていた君に、見惚れていた位だしね」
「……な、に言い出してんだお前は……」
つい先程までの頼りない雰囲気とは一変し、目の前の男は穏やかな口調でゆっくりと言葉を紡ぐ。
幾らか差がある身長、見上げなければならないのが悔しいところだった。
「昨日、君を呼び止めただろう?」
「……」
そういえば、と思う。
あの時、一体何を言うつもりだったのだろう。
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