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半ば引き摺られる様にして、二度と訪れるつもりなどなかった家へと辿り着く。
なんで俺は、またこんなとこにいるんだ……。
ぼんやりと目の前に佇む家を眺めていたら、桐也が玄関扉に手をかける。
「……て、鍵かかってんじゃねえか!」
そして勢い良く引いてみるものの、ガシャンッという音が響くだけで全く開く気配がない。
そんな様子を見て、まさか無意識の中でテキパキきっちり戸締りをして出て来たんじゃねえだろなと、ハズれてくれないと困る予感が頭に浮かび上がる。
いや、そんなことがあるはずもない。
絶対に鍵など閉めていないし、第一閉めれるわけがない。
「そんなはずねえ。鍵なんて持ってねえんだ、閉めれるわけねえだろ」
「じゃあっ……、あっ!」
腕組みをし、絶対に閉めていないことを告げる。
この記憶に、間違いはない。
けれど現実に、何故か開かない扉が目の前に存在している。
発された言葉に何かを言いかけた桐也だったが、ハッと思いついたように鍵を取り出すとガチャガチャと乱暴に扉を開いた。
「瑛介……! テメエ帰ってくんのはえ~んだよ!!」
玄関へ足を踏み入れると、家中に響き渡るような大声を上げ呼び掛ける。
「どもども~、お2人ともお早いお帰りでっ!」
呼ばれ出てきた者と言えば、今朝対面したメンバーの中では確実に1人しかいない。
「……俺を加えてんじゃねえよ」
静かな怒気を孕みながら、不機嫌そうに一言呟く。
居間から顔を覗かせた瑛介は、マイペースに玄関へと歩いてきた。
つい先程までの制服姿はどこへやら、しっかりと私服に着替えくつろぎモードに入っている。
……コイツ、始めっからサボるつもりだったな。
「なに1人でくつろいでんだお前はァッ! 学校行ったんじゃねえのかよ!!」
「や、今日は臨時休校なんで」
「同じ学校だボケェッ!!」
「……そう言うテメエもサボりだろうが、ソイツと一緒で」
自分のことを棚に上げて説教を食らわしている兄貴へ向け、鋭い突っ込みを割り込ませる。
「俺はいいんだ」
「ったくコレだもんなあ! お兄様が一番偉いんでちゅもんねえ~!」
「なんだテメエッ!! ケンカ売ってんのか!!」
「え~? ぜ~んぜ~ん、お兄ちゃんには逆らえませ~ん」
「ふざけやがって!!」
「いやいやいや、これが素なんでえ」
「いっぺん死ね!!」
そうして、当然のように始まる兄弟喧嘩。
るせえなァッ……
「るせえんだよテメエらァッ!! 元気有り余ってんなら今からでも学校行って来いや!! 戻って来たらブチのめすぞコラァッ!!」
一息つく暇もない程の急展開に晒され、疲労を感じていたところに投下された騒がしさ。
元から気が短いことも手伝って、騒ぎが自然と終わるまで待っていてやることなど当然出来ずはずもなく、早々にブチキレては2人の襟首を引っ掴み、無理やりに外へと引きずり出していた。
「ええっ! ちょっ、なんだよこの展開!!」
「咲っ!! なにすんだよ!!」
「るせえな! 馴れ馴れしく呼んでんじゃねえ!! どっか行けテメエら!!」
突然に外へ放り出され状況を上手く呑み込めていない2人を一瞥し、なんの躊躇いもなく次には、
ガチャンッ
「げっ!! マジこれ閉め出し!?」
「えーすけ! 鍵!」
「持ってるように見えるか!?」
「この役立たずっ!!」
「そういう自分はどうなんだっつの!!」
ギャーギャーッ!
「……」
外へ出ても騒ぎは続いているようで、扉一枚隔てた家の中1人残る。
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