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「はぁ、はっ……」 無我夢中で走り続け、なにかと縁があるらしく辿り着いてしまった公園。 空に瞬く銀世界、月は淡く下界を照らす。 「……っんで涙なんか……」 最後に流した涙は、いつのことだったろう。 無意識の内に伝い落ちていた涙、どうしようもなく気が動転していた。 これまで孤独を辛く思ったことなどない、避けたいなら勝手に避けていればいいし、やり合いたいならかかってくればいい。 心地良い世界、自分と関わりを持とうとしない、隔絶された世界。 「……そう思い込もうとしてただけだって言うのか……?」 本当は、孤独から逃れたい? 人の温かみを、求めていた……? 「……馬鹿か」 ボソりと呟かれた一言、地を見つめながら物思いに耽る。 あまりにも唐突で、ゆっくりと考えてなどいられなかった急展開の数々、今になって思うことは一つ。 俺はそんなに、嫌じゃなかった……? 本当に嫌なら、とっくにいなくなってる。 浮かび上がる気持ちに、ますます複雑な心境へと落とされていく。 「……ありえねえ」 けれど事実なのは、一瞬でも心地良いと思ってしまったこと。 まだ会って間もないというのに、随分と長く触れていなかった温かさに毒され、不覚にも弱い部分を表へと出してしまった。 ……あァッ! クソッ……!! なんでこの俺が……!! 「どうかしたんですか~?」 悩むことをやめてはくれない思考、没頭し過ぎてしまったが為に、背後へと迫っていた存在に気付きもしなかった。 「っ……! い、てえなクソッ……」 「ハァ? その程度でいてえとか言っちゃうんだ? アイツらはなあ、もっといてえ思いしたんだぜ? その辺ちゃんと分かってる?」 どうやら、油断してしまったらしい。 ベンチへと腰掛けひたすらに考え込んでいたせいで、近付く気配すら全く読めないまま、あの家族に思考を支配されてしまっていた。 猫なで声と生温かい息を耳元で感じた頃には手遅れで、ガツンという鈍い音とともに受けた後頭部への衝撃。 瞬間真っ白になる意識、なにも考えられない中でただ時間だけは止まったように感じた。 「いつまでも調子こいてんじゃねえぞ? マジお前、何様?」 「ぐっ……!」 頭数ばかり揃えても、敵ではない。 それは間違いないのだが、始まり方がどうにも不味かった。 油断をしていただけに、簡単に動きを封じられ手も足も出なくなってしまっている。 そこへ繰り出される容赦のない打撃に、いたるところに傷を負っては鈍い痛みが走り抜けていく。 「気に食わねえなっ!! ガン飛ばしてんじゃねえぞコラァッ!!」 「ゲホッ……! そ、の程度か……?」 これで終わると思うなよ…… テメエらまとめて……ぶちのめす……!

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