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「秀一ッ……!!!!!」
微かな風すらも遮り、辺り一体に響き渡った呼び掛け。
「……!!?」
こちらを見ようともしない横顔、行動が果たされるところで腕を力強く引き、どうにも出来なくなった唇が紡いでいた言葉だった。
「……、咲……?」
確実に骨を砕いていただろう直前、我に返ったのか地に足を下ろし、ゆっくりと一歩二歩とその場から後退する。
額に手を添え大きく息をついてから、確かめるような声色で、小さく名を呼ばれていた。
「……悪い」
呟かれた言葉にはなんの反応も示さず、視線は累羽へと向けていた。
「消えろ」
何処か遠くの景色に向けられていた瞳が、放たれた言葉を聞いて再び戻ってくる。
「……ハッ、うるせえよ」
容赦無い攻撃を受けた身でありながら、その眼には戦意を保つ。
鋭く光る眼孔は、未だ余裕を携えていた。
「消えたきゃテメエらで勝手に消えてろ」
愉快げに笑みを刻みながら、言葉を吐き捨てて空を仰ぎ見る。
「!! 颯太……!」
暫くは累羽の様子を窺いつつ、離れた場所にいたであろう颯太を呼び寄せた。
「ここだよ」
すると案外近くから声が掛かり、振り向けばすぐ側に姿が見える。
「ごめんね。咲ちゃん」
視線を合わせて一言、申し訳なさそうに紡がれた言葉。
「……行くぞ」
ホントに謝んなきゃいけねえのは、……俺のほうなのに。
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