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「だ、からって……、っ!」 「明日にでも、行ってみるといい」 「ぁっ、……は、あっ」 とっくに見抜かれているだろう気持ち、穏やかだけれど有無を言わさない言葉に流されていってしまう。 今が一体何時なのかは分からなかったけれど、3人が出掛けた先がまだやっている時間帯。 居ないのをいいことになにやってんだと思いつつも、何故だろう拒めない自分がいてしまう。 「堪えるなよ」 「ん……っ」 露わになっていた胸へ舌を落とされ、甘ったるい刺激に頭の芯からぼうっとしていく。 特有のざらついた感触に舐め上げられ、ぴくりと素直な反応を示してしまう身体。 「は、あ……、ぁっ」 甘みが増す吐息を零しながら、次第に身を委ねていくこととなる。 「弟は、大切か?」 思考が鈍っていく中で聞こえてきた言葉、俺にとっての弟は一体どんな存在なのだろう。 居て当たり前で、いつでも後ろをついてまわっては、離れなかった。 それが嫌だと思ったことなどないはずなのに、自らの手でブチ壊してしまった間柄。 問い掛けには、普段の状態でも確実に言葉を詰まらせていただろう。 「お、れは……、んっ」 「自分の気持ちに、素直にな……」 脇腹を滑っていく掌に、ピクりと反応を示してしまう。 熱くとろける思考の狭間で浮かび上がるのは、過去と現在の來の姿。 突き放し傷付けてしまった弟、久し振りに顔を合わせてとられた態度は当然のこと。 それでも脳裏に焼き付いて、決して離れてはくれない。 「じゃないと後で、後悔することになる。悔やんでも、遅いんだ」 「……ん」 穏やかな言葉を導くように紡ぐ一方で、どこか重みが含まれているような印象を受け、過去になにかあったのだろうかという想いがよぎっていく。 「あっ! ん、……ぁっ、ば……か……」 思考を巡らせるものの、途切れない愛撫にますます理性が遠ざかっていく。 いつの間にか外気に晒されていた自身へ這わされた指が、緩やかに甘い痺れを加えていく。 お陰でゴチャゴチャ考えていられなくなってきた。 「もうとっくに、答えなんて出てるんだろ?」 「ん、ぁっ……はっ」 漏れ出る音が、思考を焦がす。 答え、俺が本当は何を望みどうしたいのか。 追い出せない弟への想い、今更都合が良過ぎるのは分かっているけれど、気になって仕方がない來の今。 何事もないならそれに越したことはない、ただ自分の目でそうなのかを確かめたい。 「……どうだ?」 「んっ、お、れ……」 ――心配だ、來が。 「い、く……ぁっ、ん……!」 「……それでいい」 辿り着けた本心、答えを見いだせたことに気持ちが少し楽になっていく。 溢れる先走りは絶えることを知らず、ちょっとの刺激で甘ったるい感覚が全身を駆け抜けていく。 「でも、なにか危険があった時は……」 「ん、なもん……かんけ、ね……んっ!や、もっ……ぁっ、ああ……!!」 緩やかではあったけれど確実に追い上げられていた自身は限界へ到達し、やがて押し寄せてきた大きな波と共に解き放ってしまう。 「はあ、はッ……」 浸る余韻の中、乱れる息を吐き出しながら、秀一から発せられる言葉に耳を傾けていく。 ふわりと髪に触れてくる手、交わされた瞳は真っ直ぐ自分を見つめていた。 「別にな、危険に関わるなとは言わない。自分の信じるもののために、時には危険を侵さなければならない時もある。それでも……」 後押しをしてくれてはいたものの、危険に身を投じるようなこととなるのは心配らしかった。 自分の身くれえ自分で守れんだよボケ。 けれど來が、アイツがそんな状況に放り出されてしまった時はどうだろう、身の安全くらい容易く確保出来るのかもしれないけれど。 「無茶だけは、するなよ」 まずは、來の今を知らなければ。 「……ん」 優しく降りてきた唇に応えながら、混乱していた意識はいつしか落ち着きを取り戻していた。

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