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「今夜は派手にキメようぜYEAHHH!!!」
今まで息を潜め窺っていたのか、コンテナを越え出て来る者など、いちいち数えていたらキリがない程の人数を前に不利な状況へ落とされていく。
1人1人の強さは大した事がないにしても、これだけの数を片っ端から沈めていくにはとてつもない体力と気力を使う。
それでもあの頃ならば、俺は確実にこの状況下で笑っていただろう。
しかし今となって、どこまで族潰しとしての名を貫けるのか。
普段から喧嘩しているような奴らと、かたや久しぶりの乱闘、体力なんかすぐに切れちまうぞコノヤロウ。
「んじゃまあいっちょ、ぶっ殺せコラアァッ!!!!!」
それでも、退く気なんて更々ねえけどな。
「るせえぇ!!」
気が遠くなりそうな程の人数を相手に、穏やかなる月光を感じる暇もなく、一帯は大乱闘の場と化す。
向かう者を片っ端から叩きのめし、どうにかアタマを潰す方法はないかと懸命に思考を巡らせる。
んな数まともに相手してたら確実に俺のがヘバっちまう、そうなる前にアタマを潰す……!
とは思うものの、寄る人波に阻まれて遠くから眺める男の元へなかなか進むことが出来ない。
見えているのに届かない、っざけやがって……!!
「っ……!」
蹴りだけでは追いつかず、次第に拳が飛び始める。
裁いても裁いても、次から次へと現れるうざったさ、何処からか放たれた拳が頬を掠り、冷静に考えている暇などなくなっていく。
「無駄に数ばっかいやがって……!!」
この調子で進めば絶対的不利に陥るのは自分、しかし現役の頃でもこんな数を相手にしたことはなかったのではと、暢気な事をどこかで考えてしまう。
「つ……!」
どこのガードを固めてドコから潰していけばいいのか、1人相手に随分とご大層な真似してくれるじゃねえか。
正直、少しやべえぜ。
「ハハハハッ!! こ~りゃもうそろそろ終わっちゃうかもなあ? 案外つまんねえのな」
「テ、メ……ッ!!」
どんなにやばかろうが不利だろうが、こんなクソみてえな族に潰されてたまっかよ……!!
俺が潰すことの出来なかった族は、ひとチームだけで十分だ!
ドドドドドドッッ!!
ドッ ドッ
ドッ ドッ
「!?」
群がる波に押し負けそうになっていた時、何処からともなく響き近付いて来る爆音を耳にする。
「なんだ!?」
一台ではない、無数の音が重なり合って、確実に此処へと向かっている。
どよめきが生まれる中で、血の気で満たされていた場がまた鎮静化していく。
直に姿を現すだろう何者か達に、誰も彼もが気にして意識を奪われていたからだ。
「……!!」
案の定、この場所へ用があったらしい集団はやがて辿り着き、少しばかり開いていた戸の向こうから無数に刺し貫くようなライトが浴びせかけられる。
誰もが目を細めたところで、ズズッと音を上げながら左右に引きずられていく戸。
光の割合が増す、ふかされる音の中で1人、誰かが歩んで来る姿が映るがよくは見えない。
「よお、芦谷」
「……!?」
ゆっくりと、堂々たる足取りで歩いて来る何者から発された言葉に、目で確認するよりも早く、確信へと辿り着いてしまった。
似た状況を、過去にも一度。
「真宮……!?」
「!!?」
しっかりと、全身を瞳が捉えられる位置まで歩み止まった男は、ゼロディアルのヘッドである真宮そのものだった。
知らねえ奴は、まずいない。
それはソリッドグールの面々を見て、更に確固たるものとなった。
「バイク、取りに来たぜ」
名を聞き姿を目にし凍りついていく表情の群れを余所に、当の本人は気にする様子もなく言葉を掛けてくる。
そうだ、自分のもんみてえに乗り回してたけど、あのバイクそういや真宮から借りたんだったな。
「あ、お前あの後……」
「で、コイツらか?」
漸が居たあの場から去った後のことを聞こうしたのだけれど、偶然なのか故意なのか、途中で遮られてしまった。
「……ああ」
「見ねえツラだな」
ようやく周りに目を向けた真宮の言葉へ相槌を打ち、一様に口を閉ざすソリッドグールをぐるりと見渡す。
真宮の舎弟が外でどれだけ待機しているのかは分からないが、数だけ見ればソリッドのほうが上回っているかもしれない。
それでもこうして視線を逸らすあたり、数の多さがどれだけ勝負を左右する際に無力かを物語っている。
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