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「なんで……、ゼロディアルが……」
「そろそろ目障りだからだ。妙なもんバラまきやがって。テメエらがした事の覚悟は出来てんだろうなァ」
チームをまとめるトップ同士だというのに、すでに真宮に気圧されている。
「ケジメつけろや」
俺と対峙していた時よりも遥かに早く、チームそのものを戦意喪失させていく。
んだよ、ちょっと納得いかねえな。
俺とコイツのなにが違うっつうんだ。
「族潰しなんかと手ぇ組んでる奴が偉そうなこと言ってんじゃねえ!!」
「あ? んなもんと手なんか組むかよ。俺は俺の意思で、此処にいる」
「……!!」
「おい」
気迫負けしていたことに納得いかず悶々としていたところへ、問い掛けにハッと我に返る。
「この喧嘩、貰ってくぜ」
「……は?」
「テメエに拒否権はねえ」
「はあァッ!?」
どう傍目から見てもピンチだった自分を棚に上げて、加勢されることをあからさまに不満がる。
「っの喧嘩屋があァァッ……」
「混ぜてやっから」
「混ざってきたのはお前だろが!!」
「テメエは、テメエの事情片すことだけ考えてろ」
「……!」
一刻も早くこのチームを潰し、來の元へ。
「こんなとこで終わってたまるかァ!! テメエら!! 突っ立ってんじゃねえ潰すぞ!!」
どうにか奮い立たせ、またチーム全体の士気を上げにかかるソリッドグール。
「この人数だ! 流石のディアルもどうにも出来ねえよ!!」
そして錯覚する、圧倒的なる仲間の数が、そのまま自分たちの強さだと。
「フッ、……そうじゃなきゃ面白くねえ」
闘志が込められた瞳に睨まれる中で、満足そうな声が耳に入ってくる。
「数揃えるだけじゃ、なんにもなんねえけどな?」
歩を進めながら、次第に加速していく足は、迷わず群集へと向けられる。
「行くぜゴラアァッ!!!」
「!?」
それはやがて駆け、気合いの入った言葉一つが響き渡り、引き金となった声に待機していたディアルもまた、一斉に向かってきた。
「オルアァッ!!!」
しかし紙一重でかわせたから良かったものの、あの野郎俺がいるのも構わず飛びかかってきやがった。
刹那で一番人数がある群れの中を選び、舎弟を差し置いて真っ先に渦中へと飛び込んでいくヘッド。
野生児かよアイツは。
「……あ~あ」
喧騒からいつの間にか外され、先程まで自分が居た場所には今、真宮がそれはもう楽しそうに来る者来る者を殴り倒していく。
喧嘩に対する感情など、持ち合わせてはいなかったのに。
「あ、このまんまじゃアイツに全部持ってかれちまうじゃねえか」
過去に一度やり合った時、微かではあったけれどその感情に変化が訪れた。
「でもこりゃすぐ終わるな」
ディアルの面々も駆けつけ、もうどれがどっちだか分からない様な混戦を見て、何故か素直な笑みが零れた。
殴り合いにも、見いだせば楽しさがある。
またやり合っても、あの野郎を失神させんのは無理だろうな。
「……とっとと混ざるか」
俺自身にも、ケジメをつける為に。
張り詰めていた気持ちが、少しだけ楽になれた気がした。
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