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「別に、いいじゃねえか」
「……え?」
「かっこいいだけの奴なんて、つまんねえよ。お前はそれでいいじゃねえか。十分、……かっけえよ」
「……兄貴」
やろうとした事は間違っていたかもしれないけれど、踏み出す一歩があるのは貴重だと思う。
誤るほうが、後に得られる事も大きいから。
きっと來ならば、それら全てを受け止めて、自分の糧へと変えることが出来るだろう。
もがいてカッコ悪いほうが、カッコ良く見えたりするもんだぜ。
「とりあえず、何か食うか?」
「……うん。つうかさ……」
「ん?」
自然と溶けていったわだかまり、再び間に壁を築くことはもうしない。
まともに食事をとれない状態だっただけに、こうして意識が戻り喋っていれば腹も減るだろうと気付いたはいいが、來はなにか気になることがあるらしい。
「……そこにいんのは、……誰?」
「!?」
柔らかく聞き返せば、來は扉へ視線を向けながら遠慮がちに言葉を紡いでくる。
誰と聞かれ、バッと目を向けるとそこには。
「咲ちゃんの弟かあ」
「弟のが割かし男らしいな」
「咲つんも男前なんだけどなあ、でも」
「咲は男らしいと言うよりは、綺麗だからな」
堂々と現在進行形で覗きをする、芹川家一同が揃っていた。
各々が、口々に好き勝手な事を言う。
「……テメエらアァ、大した根性してんじゃねえかアァ」
「!!」
お決まりの如く、ビシッと一気に限界を越えていく清々しい程の怒りを感じながら、ゆらりと立ち上がる。
「知~らないっと!!」
「ダチんとこにでも行ってくっか」
「あ、俺なんかすげえ勉強したくなってきた」
「お、お前ら!! なんて薄情な息子たちだ……!!」
けれどもちろん、感謝もしている。
ちゃんと込めといてやるから、とりあえず片っ端から受け取れコラ。
「まずはテメエからだ……!!」
「うわ待った待った待った!!」
そして賑やかに部屋から出ていく姿を暫くはポカンとした様子で見ていた來。
「つうか、ココ何処だ?」
まだまだ片付けなければならない山は沢山あるけれど、順序良く確実に消化していけばいい。
「ま、……今はいいか」
全てはそう、まだこれからだ。
《END》
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