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「ん……、ば、か……、やめっ……」
淡い読書灯を点けられ、仄かな灯に包まれながら、男の表情を浮かべた秀一が、首筋にツゥッと舌を這わせてくる。
それだけでゾクりとし、これ以上は流石にいけないと抗うも、なんとも弱々しく紡がれるばかりで、力など全く入らなかった。
「どうして……? コレが目的で、俺を起こしたんじゃないのか……?」
「ち、がっ……、起こすつもりなんてなかっ……、んっ」
耳元での囁きは甘く、脳を痺れさせるには十分過ぎる威力を持ち、それだけで流されてしまいそうになってしまう。
なんで……、こんな展開になっちまうんだよ……。
起こしたのはワリィと思うけど、俺は全然……、こんなつもりでお前に触ったわけじゃ……。
往生際悪く言い訳しても、事態は変わらないばかりか進む一方で、甘ったるい吐息の数が次第に増えていく。
ば、か……、やめろって、言ってんのにっ……。
「じゃあなんとなくで、俺の眠りを妨げたわけか」
「んっ……、や、めっ……」
「いけない子だな……。ますますやめるわけにはいかなくなった」
耳を甘噛みされ、次には舌が滑り落ち、首筋から鎖骨へと、少しずつ下に向かっていく。
「お、まえ……、分かってんのか……?」
「なにがだ……?」
やめる気は更々無いらしく、いよいよどうにもならなくなってきたところで、一番気に掛かる点を舌へと乗せる。
「はあっ……、ん、と、なりに……」
衣服を捲り上げられ、脇腹を滑る指先に声を乱されながらも、懸命に押し殺して言葉を紡ぐ。
隣の部屋では、颯太が眠っている。
この家に住んでいるのは自分たちだけでなく、今はみな寝静まっているにしても、きちんと其処かしこに存在している。
そんな中でなんてもってのほかで、もしものことを考えただけで息が詰まりそうになってしまう。
「そうだな……。それじゃあ咲、……頑張って我慢しようか」
「え……? な、んで……、ん、はぁっ……」
しかし止まるはずもなく、死刑宣告ともとれる言葉を前に、成す術無く吐息を乱されていく。
声を上げるわけにはいかず、必死に押し殺しているのだけれど、颯太が起きたりしないだろうかと気をもんでしまう。
ならば力ずくでもやめさせてしまえばいいのだけれど、すでに熱が沸き立ち始めていた身体は、止める気が無いことを誰よりもよく理解していた。
いけないと思いを募らせる程、過剰に反応を示してしまい、心からやめたいと訴えたところで、一体誰が信じてくれると言うのだろう。
「あっ……、ん、んっ……」
吐息に溶ける声、胸の突起を舌で強く舐め上げられ、抑えきれない喘ぎが滑り落ちてしまう。
手の甲を唇に当て、終わり無き愛撫に何度も負けそうになりながら、理性が失われていくのを感じる。
ダ、メだ……、ダメだっ……。
このままじゃっ……、ダメだっ……。
秀一、……秀一ッ。
「ここがいいのか……? 胸が感じるなんて、やらしいんだな……。咲は」
含まれたかと思えば吸われ、起立し熟れた突起を唾液塗れにし、いやらしく艶光らせる。
もう一方の突起には手が触れ、押し潰す様に指の腹でこね回され、擦る様にぐりぐりと摘ままれる。
「はあっ……、あぁっ……」
しゃぶりつく様に舌で刺激され、脳が蕩ける様な快感に襲われ、先程よりも確実に熱の篭った矯声が、淡い灯の中で零される。
「此処ももう……、こんなにしていたのか?」
「んっ……、しゅ、いちっ……、だ、め……、さわ、なぁっ、んっ……」
何処までも翻弄され、身を焦がす様に凄絶な快感が押し寄せ、一段と強く口元を押さえつける。
「困った子だな……。乳首弄られただけで、こんなにしたのか……?」
「はあっ、ぁっ……、ち、がっ……」
「嘘はいけないな」
「んっ……! ぁっ、はあっ……、んっ」
儚げな吐息、しかし何処までも淫靡に色付いており、濃密な空気が室内を支配している。
頬は染まり、潤む瞳からは涙が溢れ、何もかもが耐えられなくなっていく。
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