56 / 132

2※

「ん……、ば、か……、やめっ……」 淡い読書灯を点けられ、仄かな灯に包まれながら、男の表情を浮かべた秀一が、首筋にツゥッと舌を這わせてくる。 それだけでゾクりとし、これ以上は流石にいけないと抗うも、なんとも弱々しく紡がれるばかりで、力など全く入らなかった。 「どうして……? コレが目的で、俺を起こしたんじゃないのか……?」 「ち、がっ……、起こすつもりなんてなかっ……、んっ」 耳元での囁きは甘く、脳を痺れさせるには十分過ぎる威力を持ち、それだけで流されてしまいそうになってしまう。 なんで……、こんな展開になっちまうんだよ……。 起こしたのはワリィと思うけど、俺は全然……、こんなつもりでお前に触ったわけじゃ……。 往生際悪く言い訳しても、事態は変わらないばかりか進む一方で、甘ったるい吐息の数が次第に増えていく。 ば、か……、やめろって、言ってんのにっ……。 「じゃあなんとなくで、俺の眠りを妨げたわけか」 「んっ……、や、めっ……」 「いけない子だな……。ますますやめるわけにはいかなくなった」 耳を甘噛みされ、次には舌が滑り落ち、首筋から鎖骨へと、少しずつ下に向かっていく。 「お、まえ……、分かってんのか……?」 「なにがだ……?」 やめる気は更々無いらしく、いよいよどうにもならなくなってきたところで、一番気に掛かる点を舌へと乗せる。 「はあっ……、ん、と、なりに……」 衣服を捲り上げられ、脇腹を滑る指先に声を乱されながらも、懸命に押し殺して言葉を紡ぐ。 隣の部屋では、颯太が眠っている。 この家に住んでいるのは自分たちだけでなく、今はみな寝静まっているにしても、きちんと其処かしこに存在している。 そんな中でなんてもってのほかで、もしものことを考えただけで息が詰まりそうになってしまう。 「そうだな……。それじゃあ咲、……頑張って我慢しようか」 「え……? な、んで……、ん、はぁっ……」 しかし止まるはずもなく、死刑宣告ともとれる言葉を前に、成す術無く吐息を乱されていく。 声を上げるわけにはいかず、必死に押し殺しているのだけれど、颯太が起きたりしないだろうかと気をもんでしまう。 ならば力ずくでもやめさせてしまえばいいのだけれど、すでに熱が沸き立ち始めていた身体は、止める気が無いことを誰よりもよく理解していた。 いけないと思いを募らせる程、過剰に反応を示してしまい、心からやめたいと訴えたところで、一体誰が信じてくれると言うのだろう。 「あっ……、ん、んっ……」 吐息に溶ける声、胸の突起を舌で強く舐め上げられ、抑えきれない喘ぎが滑り落ちてしまう。 手の甲を唇に当て、終わり無き愛撫に何度も負けそうになりながら、理性が失われていくのを感じる。 ダ、メだ……、ダメだっ……。 このままじゃっ……、ダメだっ……。 秀一、……秀一ッ。 「ここがいいのか……? 胸が感じるなんて、やらしいんだな……。咲は」 含まれたかと思えば吸われ、起立し熟れた突起を唾液塗れにし、いやらしく艶光らせる。 もう一方の突起には手が触れ、押し潰す様に指の腹でこね回され、擦る様にぐりぐりと摘ままれる。 「はあっ……、あぁっ……」 しゃぶりつく様に舌で刺激され、脳が蕩ける様な快感に襲われ、先程よりも確実に熱の篭った矯声が、淡い灯の中で零される。 「此処ももう……、こんなにしていたのか?」 「んっ……、しゅ、いちっ……、だ、め……、さわ、なぁっ、んっ……」 何処までも翻弄され、身を焦がす様に凄絶な快感が押し寄せ、一段と強く口元を押さえつける。 「困った子だな……。乳首弄られただけで、こんなにしたのか……?」 「はあっ、ぁっ……、ち、がっ……」 「嘘はいけないな」 「んっ……! ぁっ、はあっ……、んっ」 儚げな吐息、しかし何処までも淫靡に色付いており、濃密な空気が室内を支配している。 頬は染まり、潤む瞳からは涙が溢れ、何もかもが耐えられなくなっていく。

ともだちにシェアしよう!