58 / 132
4
「……颯太、まだ寝てんのか?」
普段の勢いは何処へやら、三男の部屋をコソりと覗き込みながら、気まずさをお供に入室する。
いつもなら蹴破る勢いで入って行き、寝起きの悪い颯太を無理矢理に起き上がらせ、食卓へと強制連行するのだが。
なんとなく強く出て行けず、なんともやましい一件を抱えている為、ずっと寝てくれていただろうかとまずそこを心配する。
「おい、颯太……」
布団を剥がし、身体を揺さぶってみるが反応無し。
いつも通り、普段と変わらぬ爆睡っぷりだ。
そこに少し安心するも、そろそろきちんと起こさねばならない。
あ? 秀一……?
……ああ、アイツは一生起きねえんじゃねえか。
朝一で沈めてきたらしく、一仕事終えた清々しさを持つも、颯太へ一方的に含む気まずさには敵わない。
クソッ……、やべえじゃねえかよ。
過ぎたことはしょうがねえにしても、また俺は流されて何をっ……。
隙あらば浮かぶ昨夜の情景を押し込み、颯太を起こすことに集中するも、依然として起きる気配すら無い。
なんだ……?
今日はいつになく眠りが深ぇじゃねえか。
いつもならそろそろ、眠そうにうめき出す頃なんだけどな……。
「……ふう、仕方ねえな」
まだ多少時間があることだし、もう暫くは寝かせておいてやるかと、まずは上の二人から片付けていこうと決める。
「まさか……、な」
今朝はたまたまいつも以上に寝起きが悪いだけだよなと、安心させながら廊下へと歩いていき、来た時と同様パタリと静かに扉を閉める。
「……はあ、参ったな」
別に普段通りでいいのだが、何処となくぎこちなさを出してしまう。
「ああクソッ……、やっぱとりあえず先に、奴にとどめをさしてくるか」
向かう部屋を変え、やり場の無い感情をとりあえず暴力にでも変えてしまおうと、秀一の元を目指していく。
何かしていないと、思い出さなくていいことが瞬時に蘇りそうだったから。
「……クソッ、あのばかっ……」
けれど、嫌いにはなれない。
なんでって……、そんなこともう、知ってんだろ……?
《END》
ともだちにシェアしよう!