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「ッ……」 と、そう考え始めるとキリが無く、けれども不満げに一度秀一へ目を向けると、遠慮がちにチラりと舌を差し出して、仔猫の様に二、三チロチロと舐めとってみせる。 「美味いか……?」 「……別にッ」 「ほら、それじゃよく分からないだろ? もっとちゃんと、食べたらいい」 「んっ。い、らねえよバカッ……、口に、押し付けんじゃねぇっ……」 絡み付くクリームを唇に添えられ、なに人に食わせて減らそうとしてんだと思うも、秀一の指が邪魔で上手く言葉を紡げない。 手こずっている間に、腰へまわされていた腕がするすると動き始め、秀一の舌先が首に這わされていく。 「んっ……、テメッ、なにしてっ……」 「ん……? イタズラ」 衣服を捲り上げ、割と敏感な脇腹を擦られてしまい、首筋への舌も相まって、途切れ途切れな言葉を漏らしてしまう。 「ざけんなテメェッ、いきなり盛ってんじゃッ、ぁっ!」 火を点けてしまったのは自分なのだが、そんなことには露程も気付くはずがなく、どうしてこんなことになってしまったんだろうと思う。 抵抗しようにも胸を摘ままれ、突起をくにくにとこねまわされてしまい、威勢のいい反撃も喉の奥へと掻き消えていく。 「あっ……、ぅっ」 「咲……、この指、綺麗にしてくれないか?」 「んっ……、だ、れが、そんなことッ……」 次第に熟れ、ピンと張り詰めていく突起を弄られながら、クリーム塗れの指を未だ口元に添え、到底出来ないことを求めてくる。 テメエが食えばそれで終わりじゃねえかッ……、んでわざわざんなことさせなきゃなんねんだよッ……。 「咲……」 「んっ……、ふ、んっ」 悪態をつくも言葉には出来ず、呼ばれた名に少し振り向くと、間近に迫る秀一が見え、ゆっくりと唇を重ねられる。 両者が含んでいたクリーム、それにより更なる甘さが加えられ、ピチャりと唾液と溶け合いながら、上品な香りが口内に広がっていく。 「ん、んっ……、ぁっ、はっ……」 歯列をなぞり、すぐにも舌を捕らえにくると、絡み合いながら逃げられもせず、溢れた唾液が口端を伝い落ちていく。 頭の芯からボウッとし、また良いように流されていることを嫌うも、実際は僅かな抵抗すら出来なくなっていた。 「はぁっ……、はっ」 胸の突起を弄られる度に、深い口付けの最中でもピクりと身を跳ねさせてしまい、どちらも受け入れることだけで精一杯だった。 そんな中でようやく唇を解放され、自然と秀一の胸に身体を預ける様な形になり、荒く漏れる息を止められない。 「ほら……、咲?」 肩を上下させ、甘ったるい吐息を繰り返していると、クリームに塗れた指を差し出し、その先を促してくる。 なんで俺が……、そうは思うも心はすでに観念しており、ソロソロと秀一の腕を掴むと、顔を近付けて一本一本丁寧に舐め取っていく。 「んっ……」 先ほどとは違い、しっかりと差し出した舌で綺麗に舐め取り、時おり甘い息を吐き出しながら、根本から指先へと、艶めかしく舌を滑らせていく。 「美味かったか……?」 耳元で囁かれ、考えるよりも早くに、コクンと素直に頷いてしまう。 するといとおしそうに秀一が笑みを浮かべ、今度は触れるだけのキスをすると、「甘いな……」と糖度を増した唇に告げ、その手も衣服の中へと潜り込ませる。 「あっ……、秀一ッ……、や、めっ……」 思わずシンクのへりを掴み、クリームなどでベタつく指が脇腹を滑り上がり、胸元をまさぐり始めたことに耐え忍ぶ。 「はあっ、あっ……、ぅっ、んっ……」 「ココ……、そんなに感じるのか? 女の子みたいだな」 「あっ……、ち、がっ……。あっ」 腰が砕ける様な低音、大人の色気漂う声音で鼓膜を犯し、耳朶を一度甘く噛んでから、内部へと舌を差し入れる。 「あっ、あっ……、やっ、しゅぅ、いちっ……、や、めっ」 「なら次は何処がいい……? 言ってごらん」 またも耳元で囁かれ、イヤイヤと緩く頭を振りながら、秀一の問い掛けを弱々しく拒む。 言えるわけがなく、またそんな性格を十分に知っておきながら、その上で意地悪く紡いでくる。 「このエプロン……、ちゃんと着けてくれてるんだな。嬉しいよ」 「あっ……」 「それで? 咲は何処がいいんだったかな……?」 身に付けていたエプロン、それは以前、秀一と息子たちがプレゼントしてくれたもので、圧倒的に颯太の意思が尊重されたなんとも可愛らしいものだった。 これを着けろと……? とそれはもう内から震えが走ったものだが、それでも自分なんかの為を想ってしてくれたことが嬉しく、とても有り難かったことを今でも鮮明に覚えている。 素直に感謝を述べられなかったけれど、日々コレを身に付けることで少しでも返せればと、正直なところあまり近寄りたくないエプロンではあったが、台所に立つ時は必ず着けるようにしていた。 「言えない……? なら俺が、当ててやろうか」 「えっ……、な、にっ……、あっ」 「此処……、もうこんなに熱くしてるのか」 自分から求めることなど出来ず、恥ずかしさに顔を背けていれば、当ててやると告げた秀一の手が滑り、熱を纏う自身へと触れてくる。 生地越しにも分かる昂り、それを悟られて更に恥ずかしさが募り、泣きそうになりながら顔を俯かせる。 「咲? ……どうした?」 「る、せぇっ……、も、やだっ……」 情けないところばかり晒してしまい、自分ばかりが翻弄され、意地悪なことを強いられている現実に、とうとう心は音を立てて折れ、ポロポロと涙が零れ出す。 昔はどんなに孤独を強いても、どれだけ身体や心を痛めつけられようとも、涙なんて流したことがなかった。 常に渇き、モノクロの景色にたった一人取り残されながらも、欠落していた感情は、寂しいという気持ちすら与えようとはしなかった。 そんな自分が、いつからだろうか。 縋り、涙を流し、時おり滲む弱さを見せられるようになったのは。

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