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「よ、兄貴!」 「よォ、芦谷!」 そして開けて見て、あまりにも予想外な人物が肩を並べて立っていることに驚愕し、思わず目が点になってしまう。 動揺してしまうのは当然のことであり、到底有り得ないであろう組み合わせが眼前にて笑みを浮かべており、面倒なことにすでに酔っ払っている様子である。 「……何してんだ、お前ら」 有り得ない組み合わせとは、目の前で肩を並べながら大層ご機嫌な様子である、來と真宮のことに他ならない。 來だけならばまだ、此処へ幾度となく出入りしている実弟であるし、今夜現れたところで別段不審に思うようなこともないのだけれど、問題は何故、真宮と一緒に出来上がっているのかということである。 このような状態になるまで飲めるほど、真宮と來が密接な関係であるとは到底思えないし、そもそもどうして一集団のトップともあろう者がニコニコと酔っ払ってこんなところに突っ立っているのだろうか。 考えれば考えるほど、頭が混乱する一方である。 「よォ、芦谷ー! 元気かー! 遊び来てやったぜー!」 「俺も俺もー! 兄貴、メリークリスマス!」 新たな年を迎えようとしている時に、とうに過ぎ去っているクリスマスを持ち出され、彼等を一体どうしたらいいのであろうかと考えるだけで、あまりの処理の難しさに頭が痛くなってくる。 相当飲んでいるのか、普段からは途方もなくかけ離れた様子であり、無邪気な笑い上戸になっている真宮などまず有り得ない。 一体どういう経緯で、このような状況へともつれ込んだのか見当もつかず、そろそろ応援を呼んでくるべきであろうかと考える。 「……一から説明しろ」 このような状態で無下に追い返すわけにもいかず、かと言って通常よりも更に面倒臭いことになっている彼等の相手が務まるとも思えず、とりあえずは少しでも状況を呑み込もうと説明を求めてみる。 「ん~……、ダチと飲んでたら、真宮さんがさ~」 「飲んでたらなんかよォ、コイツがなー、なんか仲良くなっちまって」 「一斉に喋ンじゃねえよ……」 いきさつを聞き出そうにも絶望的で、両者からは支離滅裂な言葉のオンパレードであり、結局のところ要点すら全く掴めない。 けれども恐らく、何処かで別々に飲んでいた時に偶然出会い、どのようなことがあったかは知る由も無いけれど、いつの間にか此処へとやって来てしまう程度には気が合ってしまったということになる。 何故よりにもよって此処へと思わずにはいられず、最後の最後にとんでもない試練が発生してしまったと思う。 「真宮は……、誰と飲んでたんだ?」 「ン~……、お前」 「そんなわけねえだろ……」 頭を抱えたい衝動に駆られながら、気持ち良く酔っ払っている真宮を見つめ、一緒に飲んでいたであろう者逹は今頃どうしているのだろうかと考える。 何よりもまず、一体何処で浴びるほどの酒を飲んできたのか、ますます謎ばかりが複雑に絡まっていく。

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