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「ちょっと携帯貸せ。誰かから連絡入ってるかもしんねえから」 「ん……、コレ」 「……煙草じゃねえよ。携帯っつってんだろ」 「ん……? コレ」 「鍵だろ、コレは。ったくもう……、ちょっと漁るぞ」 言葉が全く伝わらず、ぼんやりと眠そうに寄り添われながら、ことごとく求めてはいないものを差し出されてしまう。 これでは埒が明かないと、煙草と鍵を元の場所に収めてからあちらこちらへと触れ、携帯電話の在処を探ろうとする。 そうしてようやく見つけ出し、確認すると何件か着信が入っていたようであり、履歴を映し出すと案の定ナキツや有仁の名前が表示されている。 「ほら見ろ……、きっとお前のこと探してるぞ」 どちらに連絡しようかと迷うも、誰よりも真宮の身を案じているであろうナキツを選択し、真宮の携帯電話で連絡を入れることにする。 『真宮さん! 今何処ですか!』 僅かな時間で繋がり、慌てている様子でナキツが言葉を紡いでおり、何処か賑やかな場所に居るのであろう音声が、台詞と共に鼓膜へと滑り込んでくる。 「あ……、ナキツか?」 『え? ……アレ、もしかして……、芦谷さんですか?』 「ああ……、久しぶりだな」 悠長なことを話している場合ではないのだけれど、なかなか単刀直入な言い方も出来ず、つい間の抜けたことを言ってしまう。 始めこそナキツも混乱し、何故肝心の真宮が現れないのかとなかなか状況を呑み込めずにいたのだけれど、見知っている者の声がしていることで少し落ち着きを取り戻し、お互いに情報交換を進めていく。 『突然行方が分からなくなって心配していたんですけど、芦谷さんが一緒だと知って安心しました』 「……そっちも大変そうだな」 『ああ……、聞こえますか?』 「すげえことになってるな」 音声から判断するしかないのだけれど、とりあえずとんでもないことになっているであろう状況だけは窺え、本当に仲の良いチームなのだということが分かる一方で、阿呆ばかりだなと頭が痛くなってくる。 『ナキツー! なになに! 真宮さんから連絡あった!?』 『ああ、今……』 『何やってんすか真宮さーん! このフリーダムめ!』 真宮どころではなさそうな雰囲気に、何処からともなく有仁の声がしてきたかと思えば通話口に現れ、あまりにも声が大きくて思わず耳から携帯電話を離してしまう。 『え!? 咲ちんと一緒!? そうなの!?』 むにゃむにゃと欠伸をしている真宮を支えながら、通話口の向こうから聞こえてくるやり取りに耳を傾け、ナキツに全てを説明されたのであろう有仁が改めて声を掛けてくる。

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