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「咲……」 「んだよ……、ちょ、なにすっ……、ん、んんっ」 真剣な眼差しに捉えられ、それだけで赤らんでいく頬を隠すことも出来ず、あたふたと慌て逃れようとしている間に唇を重ねられ、すぐにもそれは深い口付けへと変わっていく。 「ん、ふぅっ……、ん、んんっ」 気が付けば舌が滑り込み、なんなく捕らえられてクチュりと口内で絡ませ合いながら、互いの唾液を貪るように織り混ぜていく。 始めこそ拒もうとしていながらも、唇を奪われてからではもうどうすることも出来ず、すぐにも蕩けていきそうになる思考の波を漂い、口付けだけで早くも意識がぼんやりと正常さを欠いていく。 「はぁっ……、ん……」 「さっき……、キスしてくれた?」 「え……?」 「気のせい、じゃないよな? アレは……」 身体から力が抜け、あまりにも自然な流れでソファへと押し倒され、次いで紡がれた言葉にハッと我に返り、またしても頬を赤らめて視線を逸らしてしまう。 これでは肯定していることとなんら変わりなく、否定の言葉を紡がなければと思考を巡らせている内に、すでに確信している様子の秀一から嬉しそうに声を掛けられる。 どうやらあの時、だいぶ現に近い辺りを彷徨っていたらしく、浅い眠りの中で何かが唇に触れてきたことを感じ取り、ようやく目覚めてきた頭の中を整理して、全ての状況を呑み込んでしまったようだ。 けれども此方としてはバツが悪いことこの上なく、懸命に平静を装いながら逃れようと足掻き、何度言葉を詰まらせようともなんとか弁明を試みるべく唇を開いていく。 「俺は……、何も……。都合のいい夢見てんじゃねえよ……」 「なら……、真っ直ぐ俺の目を見て言えよ」 「そ、れは……」 「ん……? なんだ、言えないのか?」 場から逃れようとも、ソファへと触れている手が顔のすぐ側に居り、笑みを湛えていながらも少々意地の悪い言葉を投げ掛けられてしまい、瞬時に上手く切り返すことも出来ずに唇を閉ざしてしまう。 「んっ……、や、めっ……、あっ」 顔を背け、熱っぽい頬を少しでも視線から逃れさせようと、明後日の方向を見つめながら黙して身を固まらせる。 けれども、そうしていたところで何がどうなるわけでもなく、するりと衣服の下へ温もりが潜り込んできたかと思えば、脇腹から胸元にかけてをさらりと撫で上げられてしまい、びくりと大きく身を震わせて吐息を漏らしてしまう。 「はぁっ、んっ……、よせ……、そ、んな……、つもりじゃ……」 「そんなつもりじゃない、……そう言いたいのか?  なら聞いてやろう……、他に何か意図でも?」 「あっ……、はぁっ、ち、がっ……ん、んっ」 袖を掴み、申し訳程度の抵抗を試みるも、衣服を胸元まで捲り上げられたことで両の突起が露になり、指の腹でこねくり回されては二の句も告げず、熱を孕んでいく身体からは徐々に力が抜け落ちてしまう。 指で弾かれ、微かな痛みを感じていながらも艶やかな吐息を漏らせば、摘ままれた突起から甘い痺れをもたらされ、こねくり回されていく内にどんどん硬度を増していき、ぷくりと先端が起立していく。 色濃く熟れ、じんわりと張り詰めていく乳頭を弄ばれながら、もう一方の突起には舌を這わされてしまい、特有のざらつきに何度か撫で上げられるだけですぐにもたまらなくなり、咄嗟に口元を手の甲で覆い隠すと、今にも溢れてしまいそうな声を少しでも押し留めようと努力する。

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