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「観念したか……?」
涙を浮かべ、頬を淡く色付かせながら背凭れを見つめていれば、胸元から顔を上げた秀一に見下ろされ、柔らかな唇に添えられていた手を優しく掴まれたかと思えば、指を絡ませてソファへと縫い付けられてしまう。
触れるだけの口付けを落とされ、数秒の間だけは秀一と視線を通わせ合うもすぐに耐えられなくなり、一体何度紅潮しているか分からない顔をまたしても背けてしまう。
「眠いんじゃ、ねえのかよ……」
つい先ほどまでは、あんなにも眠たそうに目蓋を下ろしていたというのに、気が付けば話し方から仕草、表情、全てがいつも通りの秀一に戻っており、消え入りそうな声でぼそりと愚問を口に出してしまう。
「すっかり目が覚めたよ。お陰様でね」
時間の経過と共に、自然と睡魔から解放されていたようであり、問い掛けたところで答えなど分かりきってはいたのだけれど、改めて明確な言葉で目が覚めたことを告げられてしまい、眠りに敗北して終了という展開には、どうやらどう転んでも結び付かなさそうである。
「んっ……、はぁっ、や、め……、アイツ等……、帰って……」
心地好い温もりを随所に感じていながらも、なかなか素直に応じることは憚られてしまい、少しでも秀一の気を逸らせようと思考を巡らせていく。
程なくして、手に手を取って外出している桐也と瑛介を思い浮かべ、家を出てから然程まだ時間が経過していないとはいえ、いつ帰って来てもおかしくはない状況を思い、艶を孕む吐息混じりの声で懇願し、熱を帯びた視線を向けながら秀一へと訴え掛ける。
「アイツ等ならどうせまだ、遊び呆けて帰って来やしないさ。瑛介に連れ回されて、憎まれ口叩いてる桐也の様子が目に浮かぶな」
さらりと頬を撫でられ、柔らかな栗色の髪を慈しむように弄ばれながら、すべらかな肌を纏いしこめかみへと口付けが落とされ、それだけでピクりと反応を示してしまう。
ふんわりとした髪に指を通され、隙間からチラリと覗く耳元へ、薄く開かれた唇を寄せられていき、耳たぶを甘く噛んでから舌先で舐め上げ、首筋へと触れながら愛撫の範囲を広げられていく。
「はぁっ……、こんな時間まで……、ん、遊ばせてんじゃねえよ……」
徐々に淵へと追い込まれていきながらも、なけなしの理性に喝を入れて総動員させ、身をじわじわと這いずり回るような快楽の渦からなんとしてでも守り抜こうと、懸命に言葉を紡いで正常な思考を保っていようとする。
けれども簡単に抜け出せられるわけも無く、流されないように、我を見失ってしまわないようにと懸命に頭を働かせるも、絶えずもたらされる甘美な痺れの前では全てが無力と化し、清廉で慎ましやかな無垢の仮面がずるりと傾いていく。
「好きにさせてやればいい。どのみち手綱を引こうとしたところで、大人しくしているようなタマじゃないだろう? ……俺みたいにな」
「あっ……、こ、の……、不良……。はぁっ、あ……」
抗い難き色香を孕む呼吸を繰り返し、ぷくりと誘うように熟れている胸元へと快楽を振り掛けられては、するりと下腹部に下りていく感触に夢現ながら気が付いてしまい、阻止したい気持ちとは裏腹に熱っぽい吐息が量を増していく。
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