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「言ってくれるな。そういうお前はどうなんだ……? 夜毎出歩いて、あの頃何してた」 「はぁ、あっ……、ん、お、れは……、遊んでなんかっ……」 「これはすまない。遊んでやっていたの間違いか……?」 「ん、あぁっ……、ち、がっ……、あっ」 意地悪な言葉を掛けられ、もっと強く反論に出ようとするもそれどころではなく、晒された自身へと手淫を施される度に感じ入ってしまい、一際甘ったるい声を唇から溢れ出させてしまう。 快楽に溺れている様など見られたくなく、少しでも秀一の視界から外れようと腕を上げ、目元を隠そうとするも感付かれてしまい、何も出来ぬまま容易く取り払われてしまう。 そうしている間にも追い詰められ、本当は思ってもいないような拒絶の言葉を繰り返すも、とうに見透かされている現状ではもっと欲しいとねだっているようなものであり、その証拠に身体は絶えず甘い痺れを欲している。 「あっ……、ん、颯太が……」 「ん……? 起きないか心配になるくらい、楽しませてくれるのか?」 「はぁ、あっ……、ば、かやろ……、んっ」 桐也と瑛介で駄目ならば、階上で眠りに就いている颯太のことを思い出し、少しでも流される時間を遅らせなければと焦りを深めていく。 本当は嫌なわけでもないのだけれど、どうしても先に立ってしまう気恥ずかしさが無駄な足掻きをさせ、意図せず相手を煽るような言動ばかりを繰り返し、自分ですらもより一層追い詰めてしまう。 吐息混じりの声を漏らし、唇を重ねられる度に理性が薄らいでいき、更なる快楽へ包まれたいという欲望が頭をもたげ、少しずつ後戻りの出来ない場所へと自らを招いていく。 絶えず手淫を与えられ、根元からやんわりと指を絡ませられる度に腰が揺れ、もっと欲しいとねだるかのように先走りが滲み出していき、クチュりといやらしく幹をけがしている。 「咲……、あんまり俺を買い被るなよ」 頬を撫で、きめ細やかな肌へと何本かの指を滑らせていきながら、まなじりから溢れ出そうとしている涙を掬い取られる。 温もりを心地好く感じ、指の先で頬をくすぐられる度にピクりと反応を示してしまい、薄く開かれている唇からは絶えず吐息が漏れ出している。 熱を孕み、頬をほんのりと快感で色付かせ、最早どちらとも分からない唾液に塗れている唇からは、誘い込むように淫靡で凄絶な色香が垂れ流されている。 もう……、どうにでもしてほしい……。 そのような想いが脳裏を掠めてしまうくらい、間を置かず与えられていく甘美な痺れに酔いしれ、順調に理性は現在進行形で喰い破られている。 「俺は聖人でもなければ、善人ですらない。独占欲もあれば欲情もするし、今はお前のことを……、喰らい尽くしてやりたいと思ってる」 獰猛な獣のように鋭く、力強く抗い難き双眸に真っ向から捕らわれてしまい、軽々しく視線を逸らすことも出来ないまま、やがて少しずつ時間をかけて毒されていく。 「だから……、俺が手を止めてくれるなんて淡い期待は、抱かないほうがいい。……最も、本当にそう望んでいたらの話だけどな?」 淡々と紡ぎ、言葉の端々から滲み出る余裕を感じられるも、実際はとうに冷静さなど欠いているらしく、艶やかな笑みを向けられてゾクりと背筋が鳴く。 組み敷かれ、一方の手を革張りのソファに縫い付けられながら、先ほどよりも一層、身体の至るところへ熱が散りばめられていくのを感じる。 真っ直ぐな視線に晒され、それだけで一気に理性が端から蝕まれていき、そろそろもう、申し訳程度ですら自分自身を律していられなくなる。 手を止めてくれることを願うどころか、拒む気持ちなど始めから持ち合わせておらず、秀一の口振りから全てを見透かされていることが容易く理解出来る。 日頃とは違い、少し意地悪な言葉を用いられてはいるけれど、湛えられている笑みからは溢れんばかりの温情が感じられ、何ら変わりのないことを証明してくれている。 拒めないし、拒まない、拒もうとも思ってはいないのだけれど、お互いに同じような気持ちであることを分かっているし、とうに見透かし合っている。

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