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第120話

「すいません…」 「いいよ」 「俺そろそろ向こうに行きますね」 「…桜緋…本当にそれでいい?」 「それしか…方法がありませんから…では…」 そういうと霞となり消えていった桜緋の気配を追いかける… 「桜緋…」 「ミヤビ」 「カナメ。おはよ」 「うん。はよ。桜緋行ったのか?」 「…うん…ねぇ…どうにかならないの?」 「…ならねぇな。零真には社と一緒になってもらわなければならない…わかってるだろ?」 社くんは零真の幼馴染だ。俺がまだ覚醒する前にかなり悪さをしていた妖魔の子孫。 色情魔だったから性的に人を誘い込みその生気を吸いつくし数を増やしていった。彼らは多くの人や動物たちを誘惑し誘惑された者たちは女だろうが男だろうが人だろうが人でなかろうが心酔していき、その人生を狂わせていくのだ。 彼らは南の者ほどではないがとても美しい人ばかり。パッと見は人と相違ないので遥か昔からその美しさを糧に生き長らえてきたのだ 社くんはこの数年の彼らの中でもずば抜けて美しく感受性も豊かなため変なものに取り憑かれやすい 何度か(まじな)いを施したし札にもまめに力を与えに行っているのだけれどそれでも頻繁に憑かれる理由はわかってる 「どうにか…あの封印を…」 「…ミヤビ…お前の気持ちは痛いくらいわかる。けど…あの方法しか社を引き止める手立てはない。もう時間があまり多くは残されていないぞ」 「けど…」 「…お前はここ辺りすべての主だ。わかれ」 社くんが意図せず解いてしまったものは俺たちが嘗て封じたあの種族の中でもとても力の強いものだった。 その被害は図りしれず社くんの家のまわりの民家がすべて空き家なのは彼が吸い尽くしてしまったからなのだ。 そのままにしておいたら彼と同じ種族のものはもちろんそこに生きている者たちが全て終得てしまう。だから悩んだ末強めの呪いをかけ封じたのだ ただすべてを滅ぼすなんてこと俺には出来なかった。 遥か昔からしてみれば彼らは人生を狂わせるほどの精気を同じ人からとるのはしなくなったから悪さをするものだけを封じて… それが甘かったのだろう。それ故俺を強く憎んであの封印の中にいた。 それが、置いてある蔵に社くんが(いざな)われ社くんの零真への想いに漬け込まれてしまい僅かに使える力を持って社くんに封を切らせたのだ。 万が一を見越して彼の肉体は奪い消し去ったのだけど…彼の力と社くんの力はよく似ていて同調しようとしている… 社くんを彼から救い彼を永遠の眠りにつかせるには社くんが愛する人…零真と心を通じ合わせること。それしか道はないのだ。 多くの文献を漁ったし多くのものに聞いたけれど全ての始まりの神にさえそれ以外の方法はないと…言われてしまったのだ

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