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第127話
時は遡り
「桜緋」
「無事終えました。もう大丈夫です。零真さまの意識を開放します。それと同時に私は行きます」
「桜緋…」
「雅様。泣かないで。俺は大丈夫です。この数年なんて俺たち終わりなき者にとって一瞬のこととなります。ですから悲しまないで」
「桜緋…桜緋」
「雅!もう時間がない!だから!」
「桜緋!また会いに行くから」
「はい。お待ちしていますね」
桜緋Side
零真の意識を開放したら俺の東條家での役目は終わる。俺はこれから神界に登り仕事をすることになっている。やることはとても多い
父と母にも碌に挨拶もできなかったがまぁ。そこはまたすぐ会える。
ただ零真の中で俺の記憶はなくなり、俺へ向けていてくれた愛は全て社さまのものになる…
「しんど…けど…それが東條家のためだから…」
何度もそう言い聞かせこれから俺が住まうこととなる神殿へたどり着く。今日は何もしたくない…許可はもらっているからもう、眠りたい…何も考えずただ只管に眠りたい
瞳を閉じる。東條家で過ごした数年…俺はとても充実していた…本当に…幸せだった…
俺を大切に扱ってくれる雅さまがいて、友人のように接してくれるカナメさまがいて…俺の憧れるシンさまと共に過ごせて…そして何より愛するということを教えてくれた零真がいた…
流れる雫を拭うこともせず横になっていた。そうしたら客人がやってきた
「よっ!零真」
「サコンさま?どうなされました?」
「失恋して落ち込んでる桜緋をからかいに来た」
サコン様は南の主軸だ。繁栄を司る場所のご当主様だからなのかとても美しい
「相変わらず趣味が悪いですね」
「褒めてる?」
「褒めてません」
「えぇ!残念。、さてさてまぁいいや。少し待ってね」
そういうと一瞬サコン様を強い光が包み次の瞬間零真の、姿になっていた
「俺が慰めてあげる。おいで」
サコンさまの目を見たら欲情させられる。逆らえなくなる。
俺は貪るようにサコン様を抱き、抱かれた。虚しくなる行為だとわかってはいるが今日は零真を壊すほど愛したかった。それが偽りだとしても…
「…桜緋…今は…まだつらいだろう…けれど必ず現れるよ…お前を支えてくれる者が…だから…今は…泣くだけ泣いて休みなよ…」
事が終わり意識を手放した俺にサコン様が髪をなでながら優しくそう語りかけていることは俺は知る由もない
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