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第134話

「零真ぁ…」 ずっと意識を失っているやっくんはそれでも俺の名前だけを呼ぶ 「やっくん…」 やっくんの髪を撫で何度もキスをする 「ごめんね…酷いことして…」 「零真」 「母さん…」 「こちらに来なさい」 そんな威圧的な冷たい瞳でそう言われたのは初めてでひゅっと喉がなる 「零真」 「はい…」 やっくんをもう一度撫でて部屋を後にし母さんの書斎へ通された 「何故呼ばれたのかわかるね?」 「…はい」 「お前は禁忌を犯した」 そう…人に対しての転移は禁じられていたのだ…やっくんをうまく転移させることができたのは奇跡的なもので一歩間違うとやっくんはどこか別の世界に飛ばされていた可能性があるのだ。   頭に血が上っていたとはいえ、許されることではない 「では…わかっているね」 「はい…」 これから俺は神々の裁きを受ける。それによってはここへはもう戻れない…やっくんと離れなければならない…二度と…会うことは許されないのだ… 「迎えが来ている」 「はい…」 「社くんや社くんを犯した子たちは忘却の(まじな)いを掛けたからその記憶は消した…お前は…しっかり裁きを受けるんだ」 「はい…」 「桜緋さま。お待たせいたしました」 「えぇ。では。失礼いたします。あ…そうでした…社さまは現在夢幻の元にいます。もうしばらくお時間がかかるかと思います」 「わかりました」 「では」 桜吹雪が舞いふっと体が軽くなる。桜の花びらの向こうに今にも泣き出しそうな母さんの顔が見えた…ごめんなさい… 次に目を開けるとそこはもう神界の一番大きな広間だった 「さて…零真」 「はい…」 「…はぁ…お前は馬鹿か?」 雷さまがため息をつく。神々の中でも割とフレンドリーな人でふらーっと人界に遊びに来るような人だ 「…まぁ。詳細は聞いているが…今回は初犯ってことで10日の奉仕。以上だ」 奉仕… 「何が行われるのかはわかっているよな?」 「わかっています…」 ここの神々は腐ってる…とにかく皆が色狂いの魔物みたいだ… 「…今回の裁きのお相手は私です…」 先程迎えに来てくれた桜緋さまが隣に立ち俺の肩を抱いた とても綺麗な人だ…桜の精みたい…うちにいる従者の紅によく似た姿をしていて体格はその双子である蒼に似ている。おそらく鬼の血筋なのだろう。

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