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第139話

「零真。お疲れさん。薬湯準備しておいたから俺の屋敷に連れてくね。桜緋もおいで」 そういって雷さまが指を鳴らすと景色が変わった。 「桜緋。零真の手伝いしてきて」   「…」 「桜緋?」 「私にはできません」 「なぜ?」 「これ以上…惨めにさせないで…雷さま…」 桜緋が悲痛な叫びをあげる 「雷さま。俺平気だから…桜緋と話す時間を後で下さい」 「俺は話すことなんてない!!」 「桜緋!!」 「行かせないよ…桜緋…ちゃんと…きいてよ」 「やだ…いやだ!!聞きたくない!!」 小さな子供みたいに泣き叫ぶ桜緋の姿はとても胸が痛い…けれど…伝えないとならない 「雷さま。薬湯後ほど頂いてもいいですか?先に…桜緋と話します…」 「わかった。話が済んだら呼んでくれ。自由に使って構わない」 雷さまが立ち去ったのを確認し桜緋をぎゅっと抱きしめた 「桜緋。勘違いしてもいいかな?」 「やめてください!!」 「桜緋。今俺と二人だよ?前みたいに話して」 「なりません!もう貴方と私は住む世界が違うのですから」 「桜緋…」 「離して下さい」 「それは聞けない」 「零真!離しなさい!!」 「ごちゃごちゃ言ってないで大人しくしてよ!」 そう言って桜緋を押し倒して組み敷く 「桜緋。俺のこと好きなの?」 「っ!!そんなわけ…」 「じゃあどうしてそんな顔してるの?やっくんが俺を見るときと同じ顔してる」 「離して下さい!!」 「俺を好きなままなら困るんだよ!」 「っ!!私はっ!私は…」 「ごめん…俺…本当に桜緋が大好きだった…誰よりも何よりも大切だった…けどね…けど…俺…やっくんと過ごしているうちにその思いは…」 「っ…ない…」 「何?」 「ききたくない!!そんなのわかってる!!わかってるからっ!!聞きたくない…お願い…言わないで…」 「桜緋…」 「零真…」 「あのときは…あれしか方法がなかったんでしょ?…俺の思いをすべてやっくんにって俺の記憶を書き換えることしか…」 「…俺は…零真のことが…でも…それは禁じられたもの…どっちにせよ叶えられない思い…だったら…」 「ありがと…桜緋…大好きだった…でも…」 「わかっています…取り乱してすいません…お幸せに…」 「桜緋…ずっと大切な人だよ」 「零真…それは言ってはだめだ…」 「ううん…俺の今の術式は全て桜緋から教わったもの。桜緋がいなければ俺は誰も守れない…まぁ…それなのにこんな裁きを受けちゃ世話無いんだけどさ…これからは間違わない…桜緋から教えてもらったことをしっかり受け止めて守り抜くから…やっくんと一緒に…」  

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