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第11話

ゆっくり目を開けると直ぐ側にカナメの綺麗な寝顔があった… はぁ…きっとこの想いは気のせいだ…初めての相手だったから頭が…心が混乱しているだけ…だから…これは…気の迷い…でも…我慢できなくてそっと唇に触れた 「カナメ…好きだよ…」 とても重い体を引きずり外へ出る 今日も何も変わらないいつもの朝… 空気は多少淀みが薄れたような気もした 「ん、っ…ミヤビ様…」 「おはよ。カナメ。ミヤビでいいよ」 「しかし…」 「俺からの命令。わかった?」 「御意」 「ミヤビ。体大丈夫?」 縁側に立つ俺を後ろから優しく抱きしめ聞いてくるカナメの声に涙が溢れ出しそうだ…とても暖かい…優しい…心地よい声… 「さすが…ご当主様だ」 「ん?」 「約800年ほど前この儀式が行われたときのご当主様は3日ほど一人では動けなかったそうだ。でもお前は一人で動けてる」 「今日も学校だしね。色々言ってらんないでしょ」 「お前の匂いが強いのは秘めたるものがかなり大きいからだろうな。お前が覚醒したら…俺…もうこうやって近付けないかも」 カナメの顔が近づいたと思うと同時に唇に暖かいものが触れた 「カナメっ」 「あ…申し訳ございません」 片膝を付き深く頭を下げたカナメを見やりそっと柔らかい髪を撫でた 「いいよ。少し驚いただけだから。カナメのキス好きだよ。だから気にしないで」 「っ…ミヤビっ…ごめん…」 そのあともう一度深く口付けられた。気持ち良くて涙がこぼれた 「んっ…」 「あ…」 「もう…カナメったら…そろそろ広間へ行こうか」 「うん」 カナメを連れ広間へ行くと女中たちが慌ただしく行き交い食事が準備されていた。 既にシンさん、ケンさん、ハクさんの姿はあったがこの屋敷の主であるサコンさんがいない 「サコンさんは?」 「あぁ…クソ狐ならまだ部屋で…」 「はぁ…またですか。俺呼んできます」 心底嫌そうにカナメが動いた。 「そんなに嫌なら呼んでこなくても良いだろう」 「いえ。ご当主様がいらしてるのにそんなことはできません」 「カナメ。俺も一緒にいこうか?」 「いえ…なりません…ミヤビ様にあのような…ここにいてください」 「そう?わかった」 用意された場所へ座りしばらく待つ。なかなか戻ってこない… 「あんのクソ狐…ミヤビがきてんのに…」 「先に召し上がってください。主はもうしばらく戻らないと思われるので…主も遅くなれば…先にとおっしゃってましたし…」 女中に促され食事を先に始めもう終わる頃に気だるそうな表情のサコンさんと着乱れ首元にいくつもの朱を咲かせたカナメが戻ってきた どう見ても情事後だ… 「おはよぉ…みんな…」 「サコン…ご当主様がいらしてるのに何ですか…」 「仕方ないじゃん。俺が魅力的だから」 「はぁ…何を言っても無駄ですね」 「ミヤビちゃんが綺麗すぎるのがいけないんだよ。昨日のミヤビちゃんの色気に当てられちゃってね」 「サコン。いい加減になさい」 淡々と諭すハクさんの隣で俺は呆然とするしかなかった…

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