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第38話
カナメside
「改めまして。私は泡影と申します」
「泡影…」
「えぇ。カナメ様。ミヤビ様はご無事です」
「はい」
「ただ…疲労から精神と肉体が離れてしまいました。それを癒すため夢想へ精神が飛んだのです。夢想は精神を安定させるための…人で言う…病院みたいなところだと思っていてだいて良いかと思います。あちらでは精神のみ存在しています。ただそこにいくだけで安定していくのです。ですから次の満月までお待ちください…」
「その間は…ミヤビには会えない…」
「えぇ…」
「なぜわざわざその話を俺に?」
「はい。ミヤビ様の魂があなたを呼んでいるからです」
「俺を?」
「はい。ミヤビ様のお気持ちを私が言うのは…あまり良くはないのですが…
私が今このお体に入っている。これは危険なことなのです。ですがミヤビ様の強い要望により私がこちらへ来ました。いったん他のものに肉体を使われること。これはミヤビ様ご自身が戻れない可能性を高めるものなのです」
「どういうこと?」
「簡単に言うならば一つ間違えば私とミヤビ様が入れ替わる。と言うことです。ミヤビ様が私…泡影となり私がミヤビ様となる。ミヤビ様が夢想の住人となり私がこちらの者に…夢想にただ送られ肉体は空である状態であれば確実に本人が戻ってこれます。しかし一旦別の者が入ってしまえば肉体が順応してしまうことがあるのです。カナメ様。会ったことはないですか?最後に会ったときと次に会ったときが何かが違う…という者に。それは本人が夢想にいる間にどこか別の…妖者なのか人なのか…それははっきりしませんがそれに肉体を奪われてしまったと言うことなのです」
「じゃあ…」
「えぇ…ミヤビ様の妖力であればおそらく戻ることはできるはずなのです。そのためのまじないも先ほど執り行われました。しかし…さらにそれを確実のものとするためにもう一つ出来ることがあるのです。それが…想っているものの接吻をもらうこと。そして出来れば…相手の体液を中に取り込むこと…」
「ミヤビは…」
「私がミヤビ様の肉体に入ったときあなたを思う気持ちがとても強く流れ込んできたのです。ですからミヤビ様はあなたを想い焦がれている。あなたを求めている…あなたを…愛している…私は影です。ミヤビ様の隠れた部分が私には強く反映される。そのせいか…あなたがきた時から身体中が熱くて堪らないのです。胸が苦しくて堪らないのです」
はらはらと雫が流れ落ちる。ミヤビの姿をした別の誰か…
そっと涙を拭ってやるとふわりとミヤビの顔で笑う…中身は違うのに愛しい気持ちが込み上げる…
抱き締めてやるとゆっくりと目を閉じ俺に体を預けてきた
「なぁ。泡影。」
「はい。」
「それはあちらのミヤビにしなければならない?それともお前が今入っているこの体にしなければならない?」
「…この体に…です…でも中身はミヤビ様ではありません」
「わかった…」
目の前のミヤビの唇に自分のそれを重ねる。
触れた唇から熱が広がる…ミヤビ…愛してる…
自分の唾液をミヤビへ送る
コクりと細い首が動く
「カナメ様…んっ…」
「これで足りた?」
「はい…」
「ん?足りない?もっと欲しくなっちゃった?泡影?」
「いえっ…」
「ミヤビの体で反応しちゃってるけど?…」
「あまりにも…官能的で…申し訳ございません。でもこれ以上は…ミヤビ様を裏切る形となります。だからこれ以上は…なりません」
「泡影。俺がいつか夢想へ行ったとき…先をしてあげる…」
「何を!…きっと私は今ミヤビ様の中なのでそうなってしまっただけで私自身がそうなるわけではありません」
「泡影…お前の姿見てみたいな…有り難う」
「いえ…」
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