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第80話
カナメの家は外から見る分には全く何もないようだし物音もしなかった
玄関を開けてもただ静まり返っているだけ
中に足を踏み入れると視界がぼやける
「ミヤビ。待て」
「わかった」
シンさんの声で一旦外に出る
「ミヤビ様!!」
「リョクさん?」
「遅くなり申し訳ございません。やはりここから壊しにかかりましたか…」
「どういうこと?」
調べた結果昔から南に執着する族がいるようだった。それも1つや2つではない。
南は見目麗しいものばかりだ。それに目がない輩が多くいるようだった。
特に翠玉さんは昔からこの手の者に狙われることは多かった。
しかし南は武術も長けているものが多いのでこれまでどこの族の手にも落ちたことはない。
それでも諦めきれなかった彼らは同じ志を持つもので集い規模を拡大していった。
そしてとてつもない力となった。その矢先。先日の南の鳥居の破壊により簡単にここ辺りまでやって来ることができた。
最初にここを狙った理由は簡単。すでに妖力もなくほぼ人として生活しているかつて欲した相手が翠玉さんだから。
そしてその子供であるカナメは南の実力者。カナメを潰せば南は簡単に陥落する。そう考えたはず。欲していた翠玉さんも手に入り南も手に入る。
相手はカナメが既に南の者ではないと言うことまでは知らなかったのだろう
「そしてこやつらの得意としている術は空間を歪めること。だからおそらく玄関から入ってしまった先は奴らの巣窟になっている。この数では太刀打ちできない。全て飲み込まれあっという間にここら辺りは奴らの手の内に…ですから…」
「シンさん。精鋭たちを集めて」
「わかった」
状況は式を使い既に伝達している。後は待つのみ。
そしてもう1つの理由。
奴等がすぐに仕掛けてこなかったのはおそらく俺の力も欲しいからだろう
南の者を手に入れその後は己が上にたつことを望んでいるはずだから。
覚醒していなかった俺を落とすのは簡単なことだがそれでは俺の中に眠っていた力を物に出来ない。だから待ったんだ
そしてその時が来てここを始めに狙えば一番近くにある北が動く。だから敢えて翠玉さんに電話を受けさせた。そしてその時後で物音をたてれば、情報収集は得意としていない北の血の気の多い者たちは後先考えずに俺を連れここへきて皆直ぐに飛び込んでくると踏んだのだろう
北は力があるから何も考えずに動き出す者は多い。
どこよりも力があるから始めに潰せば後は楽に事が運ぶ。
そこで俺の覚醒した力まで手にできれば…
彼らの少しの誤算は冷静な判断が出来る鬼がいたということ
「おそらく今はカナメが応戦しているはずですが…多勢に無勢…無事でいてくれれば良いのですが…」
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