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第8話
「……俊太郎?どうかしたの?」
「いや、一色が元気で良かったなと思って」
そのひと言に、一色の顔が柔らかくなる、少し下を向いて照れくさそうに笑う。
「今日は優しいね」
「え?昨日と何か違っている?」
「ううん、何でもない」
米と汁だけの簡素な食事を済ませると二人で日の当たる縁側で庭を眺めて過ごした。この庭を知っている、遠い昔の記憶なのか、それとも何かの幻影か。
二人で木々の色を眺め、風の音を聞きながら何も話さずにただそこにいた。
暖かい光が差していて、暖かい柔らかな日差しに、うとうとといつの間にか眠ってしまっていた。
『駄目なもんは、駄目だ』
『和尚様の話は聞いただろ?普通の子だって……』
『駄目だ、お前、あの化け物に食われるんやぞ。白蛇の呪いらしいと噂になっとる』
『だから違うって言うてるやろ、会えば分かるって!おとん、聞いて。なあ、聞いて』
『おい、俊太郎を蔵に閉じ込めとけ。今日は出ないように見張っておくんやぞ』
『一色と約束したんや。だから行く、今日も待ってる、行かせて後生だから』
外の蔵に引き摺られるようにして連れて行かれた。一色は何もしていない、人と違うということが何の罪になるのか教えて欲しいと、びくともしな厚い扉を叩きながら叫んだ。そして泣きながら眠りについた。
「……俊太郎?ねえ、風邪を引くよ、そろそろお茶にしようか」
「あれ?寝てた……?」
「ほんの数分だよ」
「そうか」と答えてふと気が付く。確信した。ここにいる一色は昨日通りで助けてくれた青年とは、物腰が違う、口調が違う、同じ顔をしているようで全く違う。
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