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第10話

 「何を見ているの?」  袖口からちらちらと見えている腕が視線を奪う。  「ねえ、何を見ているの?」  白絣(しろがすり)の柔らかい着物から出ている、着物よりさらに白いその腕が、その衣の下に隠されている一色を想像させる。透けそうなその絣の着物に包まれたその身体の見せる曲線はあまりにも妖艶で、白蛇の化身と言われても不思議はないと思う。  一色の白い指先が着物の衿に沿い、つつと滑る。その動きを目で追いながら、自分の喉が音を立てるのが分かった。  「そんなに知りたい?」  答えられない動けない。絡んだ視線が色を含み、互いの視線が意味を持ち始める。その着物を剥ぎ取り、白い肌を陽の下にさらしてみたいなどと言う勇気はないのに、何かを期待して心音だけがどんどんと加速していく。  「ねえ、なにを、みているの?」    ゆっくりと問われる。問わているのか、それとも誘われているのか。    「……」  するすると帯を一色が解く、はらりと前の合わせが(はだ)けた。帯が床に滑り落ちる小さな音が脳にじんじんと響いてきた。

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