15 / 18

第15話

 「よっ、お帰り。絶賛反抗期の少年よ!」  「うるさいよ」  「お前、姉に向かってその台詞、何様のつもり?……ん?あれ?どうかした?」  「何が」  「いや、ふーん。ま、いいか」  間違いなくここは自分の家で、自分の生活の場。それなのに何故か落ち着かない。何かが欠けている、今までもどこかに物足りなさを覚えていたが、何が足りないのか分かった今ではどうしようなく飢えを感じる。  「落ち着かない」  自分の部屋に戻って、周りを見回して本当にここが自分の居るべき場所で合っているのか分からないと思った。考えるのは、ただ一色のことだった。  「あら?ピアス外したのね」  夕飯の時、母親のひとことで慌てて自分の耳に触れた。左の耳に小さな銀色のフープピアスを付けていた。  ……あれ、ない。  「でしょ?私も思ったんだ。反抗期卒業か?ってね。ピアス外して、なんだか大人な顔して帰ってきたし……分かった!振られたんだろー」  そうなのかもしれないと思う。振られたと言われて妙に納得した。  「多分そうなんだろうな」  その答えに母親と姉貴が不思議そうに顔を見合わせていた。  「やっぱり変。お前本当に俊太郎なの、気持ちわる……」  何も変わっていない日常の中で、全てが違って見えるのは何故なのだろう。

ともだちにシェアしよう!