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第16話

 「よ、中谷。お前、昨日大丈夫だったか?」  「お前に昨日は叩かれた時ピアス飛んでったっての。今度なんか奢れ」  朝学校に来る前にもう一度あの空き家をのぞいてみたが、何もなかった。本当に何も。  「マジか?わりい。ところでさ、今日の数学……」  話し続ける友人の声が何故か遠くに聞こえる。面白くない、何が昨日とこんなに違うと言うのだろう。  「……?中谷?聞いてんの人の話?」  「あ、え?何?」  「お前どうした?」  「いや」  「変な奴、まあいいか」  あまりに素っ気ない態度に白崎は携帯を取り出して弄り始めた、話をするのを諦めてしまったようだった。ふと目を落とした時に白崎が持っている雑誌が目に入った。  「それ……誰?」  「あ、俺の彼女」  「違う、携帯の待ち受けじゃねえよ。その雑誌の表紙」  「あ?知らねえ、モデルだろ。おーい、菊池、これ誰?」  「えー、有名じゃん。モデルでしょう?名前は、えっと……なんとかヒイロとか」  心臓が痛い、呼吸ができない。  「貸して、それ」  白崎からその雑誌を奪い取るようにして手にした。  「これって」  その表紙のモデルの耳についていたのは紛れもなく昨日失くしたはずのピアス。間違いない、ピアスに残る傷は筆箱の中でついたものだ。  呼吸ができない。どうして?どうして?  「俺、帰るわ。吐きそう……これさ、借りて言って良い?」  「いいけど、お前本当に昨日から変だぞ。先生には言っとくけど、大丈夫か?」  白崎に借りた雑誌を握りしめて、教室を後にした。  ……一色に会える、一色が、ここにいる。

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