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第5話

名前聞かれるのが1番苦手な俺……理由は1つ。 「俺、あんまり名前言いたくないんだよな、キラキラネームだから」 キラキラネームだからだ。本当、親を恨むよ……虐めの原因作ってくれたんだからな。 「キラキラ?」 キョトンとして俺を見ている。キラキラが通じないのかな? 「DQNネームともいうやつ、こういう名前付ける親ってさ学習能力ゼロって言われてんだ、子供が名前で虐められるとか考えてられないの、犬や猫じゃあるまいし」 「えっ?虐められたの?」 驚いたように聞かれた。大きい目が更に大きくなる。 「からかわれてたよ!蹴球でサッカーだからな!アホか!サッカーはスポーツ名で人の名前じゃなーし!親父がサッカー好きだからってつけやがって、窓口も止めろよ、そういうのは!」 「サッカー……」 「繰り返すな!!キラキラネームなんかつけやがってええ」 キョトンとした顔で繰り返された……一般的な反応はこれである!もう、数えきれない程、同じ反応をされたのだ。 「キラキラって光ってるからキラキラなんですか?」 「しらねーし!」 キラキラネームの由来なんぞ知るか!! 「星とか街のネオンとかキラキラと綺麗じゃないですか、僕キラキラ好きですよ。お父さんがサッカー好きみたいに君の事も大好きなんだね、お父さん、きっと、キラキラ輝きますようにって付けたんだと思います」 正直驚いた……誰もこんな風に言わなかったから。付けた親はサッカーが好きだからとか訳の分からない理由を言ってきたし。いやいや、好きでも、これはスポーツの名前であって人名ではない!!だから、凄く新鮮でそして嬉しかった。 嬉しくて照れくさくてつい、「お前ばか?」なんて言ってしまった。 「ば、バカ?……先輩にいつもバカかって言われます……僕、バカなのでしょうか?」 俺の馬鹿という言葉を間に受けてなんと、しょんぼりとしている。凄くしょんぼりで可愛く見える。 「ば、あ、いや、違う!そんな意味じゃないから!ごめん」 落ちこませてしまった……褒めてくれたのに……俺の方が馬鹿!!なので謝って頭を撫でた。 「違うよ、ありがとう……そんな風に言われたの初めてでさ……で、お前の名前は?俺は教えたんだから教えろよ」 頭を撫でながら、名前を聞いた。でも、聞いた瞬間凄く寂しそうな顔をした……。 「えっ?あの……先輩にはヒナとかヒヨコとかチビコって呼ばれます」 寂しそうな顔で答えた名前は明らかに名前ではなくて、あだ名っぽかった。 「えっ?あだ名?あだ名じゃくて名前、親がつけてくれる名前だよ」 「ありません……」 下を向いて凄く凄くしょんぼりとしている。 「あの、水子って知ってます?僕……それなんです。産んで貰えなかったんです……それで、ずっと暗い所でうずくまっていたら先輩が来てくれたんです、そして、先輩に色々教えて貰いました、勉強も家事もテレビも映画も漫画喫茶もアニメイトも秋葉原も……凄く凄く楽しい……」 俺は馬鹿だ……凄く言い難い事を言わせてしまった……なんだよ……名前ないってそういう事? 産んで貰えなかった……。 俺は男だから女の子気持ちとか分かんないけど……それって殺すって事だよな?お腹の中にいる命を……えっ?それって何だよ? 名前すらつけて貰えなくって……この世の楽しい事さえ奪われちゃったのかよ?なんだよ!なんだよ!俺……なんて事聞いてしまったんだよ!! 堪らず俺は彼の小さい身体を抱きしめてしまった。 「ごめん……何も知らなかったから……ごめん」 本当にごめん……俺のキラキラネームなんて……馬鹿みたいな悩みじゃないか。 名前を呼んでくれる親が居るのだから。

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