5 / 11
第5話
名前聞かれるのが1番苦手な俺……理由は1つ。
「俺、あんまり名前言いたくないんだよな、キラキラネームだから」
キラキラネームだからだ。本当、親を恨むよ……虐めの原因作ってくれたんだからな。
「キラキラ?」
キョトンとして俺を見ている。キラキラが通じないのかな?
「DQNネームともいうやつ、こういう名前付ける親ってさ学習能力ゼロって言われてんだ、子供が名前で虐められるとか考えてられないの、犬や猫じゃあるまいし」
「えっ?虐められたの?」
驚いたように聞かれた。大きい目が更に大きくなる。
「からかわれてたよ!蹴球でサッカーだからな!アホか!サッカーはスポーツ名で人の名前じゃなーし!親父がサッカー好きだからってつけやがって、窓口も止めろよ、そういうのは!」
「サッカー……」
「繰り返すな!!キラキラネームなんかつけやがってええ」
キョトンとした顔で繰り返された……一般的な反応はこれである!もう、数えきれない程、同じ反応をされたのだ。
「キラキラって光ってるからキラキラなんですか?」
「しらねーし!」
キラキラネームの由来なんぞ知るか!!
「星とか街のネオンとかキラキラと綺麗じゃないですか、僕キラキラ好きですよ。お父さんがサッカー好きみたいに君の事も大好きなんだね、お父さん、きっと、キラキラ輝きますようにって付けたんだと思います」
正直驚いた……誰もこんな風に言わなかったから。付けた親はサッカーが好きだからとか訳の分からない理由を言ってきたし。いやいや、好きでも、これはスポーツの名前であって人名ではない!!だから、凄く新鮮でそして嬉しかった。
嬉しくて照れくさくてつい、「お前ばか?」なんて言ってしまった。
「ば、バカ?……先輩にいつもバカかって言われます……僕、バカなのでしょうか?」
俺の馬鹿という言葉を間に受けてなんと、しょんぼりとしている。凄くしょんぼりで可愛く見える。
「ば、あ、いや、違う!そんな意味じゃないから!ごめん」
落ちこませてしまった……褒めてくれたのに……俺の方が馬鹿!!なので謝って頭を撫でた。
「違うよ、ありがとう……そんな風に言われたの初めてでさ……で、お前の名前は?俺は教えたんだから教えろよ」
頭を撫でながら、名前を聞いた。でも、聞いた瞬間凄く寂しそうな顔をした……。
「えっ?あの……先輩にはヒナとかヒヨコとかチビコって呼ばれます」
寂しそうな顔で答えた名前は明らかに名前ではなくて、あだ名っぽかった。
「えっ?あだ名?あだ名じゃくて名前、親がつけてくれる名前だよ」
「ありません……」
下を向いて凄く凄くしょんぼりとしている。
「あの、水子って知ってます?僕……それなんです。産んで貰えなかったんです……それで、ずっと暗い所でうずくまっていたら先輩が来てくれたんです、そして、先輩に色々教えて貰いました、勉強も家事もテレビも映画も漫画喫茶もアニメイトも秋葉原も……凄く凄く楽しい……」
俺は馬鹿だ……凄く言い難い事を言わせてしまった……なんだよ……名前ないってそういう事?
産んで貰えなかった……。
俺は男だから女の子気持ちとか分かんないけど……それって殺すって事だよな?お腹の中にいる命を……えっ?それって何だよ?
名前すらつけて貰えなくって……この世の楽しい事さえ奪われちゃったのかよ?なんだよ!なんだよ!俺……なんて事聞いてしまったんだよ!!
堪らず俺は彼の小さい身体を抱きしめてしまった。
「ごめん……何も知らなかったから……ごめん」
本当にごめん……俺のキラキラネームなんて……馬鹿みたいな悩みじゃないか。
名前を呼んでくれる親が居るのだから。
ともだちにシェアしよう!