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逢瀬 8 ♥
うなじに歯をたてる。
「ああ!」
慣れない感触に声をあげるが揺れる腰が止まることは無い。焦れたように前後に揺れることで快感から逃れられると思うのか、男の動きは未熟である経験値を晒していた。自重で逃れられない繋がり部分を下から突き上げる。
「ああっ!」
肩甲骨の間を舐めあげ、後ろから胸にまわした手でまさぐる。
「やっもう、あかん……て」
「あかん?そんな言葉は知らないな。「もう駄目」が正解だ」
耳を口に含んで舌をはわせながら言ってやると男の中がゆるやかにうねる。
「見えるだろ?見るんだ、ちゃんと目をあけて見ろ」
鏡に映るのは背面座位で繋がった姿だ。結合部分を余すことなく映し出している。男に背後から征服されている自分の姿は何を感じさせるのだろうか。初めての挿入にも萎えることなく勃ちあがる陰茎は嫌という言葉とは裏腹だ。顎をつかんで俯きがちの顔を押し上げる。
「ほら、見るんだ」
「……も……堪忍……」
「堪忍?「もうやめて」が正解だ」
ギュっと乳首を強めに捻る。
「ああ!っ、やぁ!」
「嫌?ここはこんなだぞ?」
せり勃った先端を親指で押し潰すように刺激する。親指の動きとともに濡れそぼるカリ。
そこだけをしつこく愛撫すれば、堪えきれない喘ぎがもれる。
「も……もっと」
「もっと?」
「ちゃ……んと……さわって」
「じゃあ、目を開けろ」
ゆるゆると開かれた目蓋。ベッドの上の情交の様を映した瞳は何を見た?コプリと先端から零れる粘液。
「男に挿れられて感じ入る自分はどうだ?興奮するか?」
「あ……堪忍」
「何度も言わせるな、そんな言葉はしらん」
どす黒い感情が身体をめぐる。嫁や子供に投げかけるだろう言葉。標準語とは違う生活に根差した言葉。女子供と交わすのと同じ言葉など聞きたくもない!
人差し指を口にねじ込む。
「さっき俺がしたように舌を絡めて見ろ。俺のだと思って舐めてみろ。上手にできたら触ってやる」
「ん……ふ」
「目をちゃんと開けて自分を見ろ」
八の字を書くように下から緩く突きあげれば中がうねる。拒むように固かったそこはもう柔らかく自身を包み込み、絶え間ない快感を送り続けてくる。捻じ込んだ指で舌を愛撫するようにくねらせれば自然に舌が捲きついた。
「上手だ、そのまま絡めて舐めてみろ」
下から突き上げられ胸をまさぐられている様は鏡越しというシチュエーションがより淫靡な光景にみせている。言われるままに指を受け入れて舌を這わせ、頬を上気させている自分を見ながら男は確実に興奮していた。
触らずとも先から液をこぼし、腰が跳ねるように動きだす。胸、腹、脇腹、太もも。手のひらを滑らせると肌が泡立ち中が締まる。
「……ん」
舌が指を押し出した。縛られた両手首で俺の指を掴むと、顔を後ろに向けて乱れた呼吸のままに言う。
「も……いかせて。も……あかん」
「あかんも堪忍も俺の知らない言葉だな。これ以上言わないか?」
「い……わない」
「約束するか?」
「い……わない……あっ!!」
強く扱きあげれば悲鳴のような声がほとばしる。
「自分がイクところを見ろ。俺でイクところを目に焼き付けろ」
腹を抱えるよう右手をまわし、より密着させ下から突き上げる。左手で熱い陰茎を握り先端を捏ねるようにすれば男の背中が仰け反った。
「あっ!ダメ!……あ……あ……やめ……て」
「「ダメ」も「やめて」も正解。よくできた。いいこだ」
耳に舌を差しこむと嬌声が一際高くなる。絞られる様な締め付けと脈打つ陰茎が絶頂に近いことを告げていた。それに合わせて自分を追い込む。
這い上がる射精感と征服欲のもたらす熱い衝動。自分の手に堕ちたという達成感。すべてを繋がった部分に集中させる。
「あ!も…イク…で…あ……あ、あああ!!!!」
ギュンと締まると同時に男の先端から勢いよく白濁が迸る。鏡に映った射精する自分の姿を見たせいなのか、男の右目から涙が一筋零れた。それは僅かに残る理性を吹き飛ばし、緩い動きに耐えられなくなる。
体重をかけ背面座位から後背位に位置を変えガツガツと打ち込むと痺れるような快感が脳天を衝く。満たされた征服欲がもたらす精神的な高揚ととともに、ありったけの熱を吐き出し迸らせた。
「お前は俺のものだ」
震える背中ごとベッドに押し付ける。
「俺のものだ」
繋がったままの中がギュルンとうねった。
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