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温 /和泉莉緒
もうすぐ、クリスマス。
ツリーやらイルミやら、キラキラし始めて、皆が浮き足立つ季節。
息子の為に、プレゼントを買いに出掛けた帰り。
「ツリーにお願い事を飾りませんか?」
地下街で星形の黄色い紙を手渡された。
―願い事、なぁ…。
今1つだけ、願うなら
―こんなん、おこがましいて、鼻で笑われるかもしれんけど。
温いとええなぁ…。
オレは静かに想いを馳せた。
北国の冬は長い。
寒いのは、いうまでもないが、連日空が暗いと気持ちも塞ぎがちになる。
何かふとしたキッカケで、気持ちまで凍えそうになるのは、ツラいもんや。
―せやから、いうて
オレが何をしたれる訳でもない。
むしろ、虚しさを感じるキッカケ、やったりしてな…。
シチューやろうが
ヒーターやろうが
女だろうが
この際、何でもええわ。
―静に温もりを。
何かホッと出来るような、そんなひとときが、あったなら…。
まぁ、あいつは黙って凍えとるようなタマやないとは、思うけどな。
その願いが届いたのか、否かも、知る由もないまんま。
オレは、年末の慌ただしい日々を追われるように、過ごしたのだった。
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