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逢瀬 札幌編 5 ♥
部屋に戻れば、和泉はベッドの中にもぐりこんでいた。バスルームのガラスは曇っていたのでバスを使ったのは明らかだ。洗面台に置いておいたシリンダーが無くなっている。
ここまでできるのに、どうして「逢いに来てくれ」という一言がいえないのだろう。離れられるとでも思ったのか?それはあまりにも甘い希望でしかない。
服を脱ぎ捨て軽くシャワーを浴びた後、ベッドの上掛けをはぎ取った。備え付けのパジャマを着た姿にがっかりする。どうせ脱がされるというのに布きれ一枚身に纏ったからどうだと?
一言も言わない、俺を見ない。
目をつぶってベッドに転がったままだ。動きもせず、浅い呼吸を繰り返している。
「マグロで抵抗?俺がそんなことで萎えるとでも?反対だな、好きにやらせてもらう。」
両足首を掴んで足を持ち上げるとシャツタイプのパジャマの裾はかんたんに乱れた。
「驚いたな。下着は履かなくてよかったのか。俺はこっちのほうが嬉しいが。」
「・・・汚すと面倒だから。」
しとどに濡れて汚してしまう自分を想像したのか?目の奥で青白い炎がチラチラと揺れ出す。わきあがってくる加虐心が動悸を荒々しいものに変えた。
ゆるく勃ちあがりかけているペニスに息を吹きかけるとピクっと揺れた。先端に人差し指をはわせる。
「あっ・・・。」
裏筋をゆっくりたどり、陰嚢を爪のさきでひっかくと太腿がわずかに開いた。人は一度覚えた快楽から抜け出すことはできない。僅かの刺激が引きだす快感の記憶。
濃密な時間を過ごした週末の出来事が身体の底から起き上がるのだ。そうだろう?和泉。
右足首だけをもちあげ、親指を口に含んだ。
「あっ!」
指の間に舌をはわせ、亀頭にほどこすように愛撫を重ねる。リップ音と水音が薄暗い部屋に響いて消えていく。ベッドの上に座り肩に足をのせ足首から順にキスをおとす。舌で味わい唇でやさしく触れる。
ネットリと膝裏に舌を這わせると足がビクっと揺れた。
「あっ!やだ!」
皮膚が薄く柔らかい、そして普段そんな場所が自分の身体にあるなんて気にもしない場所。
そこへの刺激は新たな快感を生み出す。昂ぶった状態なら、指にある水かき部分への刺激も愛撫に成り変わるのだから。
足は指にはじまり、足首、くるぶし、膝、膝裏、太ももの内側、足の付け根。快感を拾える未知のスポットが沢山あるのに、ここを素通りする男が多すぎる。
太腿の内側に移動した頃には、和泉のペニスは完全に勃起した状態になっていた。
俺の物だという印をつけてやろう、こんな場所誰が見るというのか。
足の付け根に近い場所を思い切り吸い上げた。
「やっ!なに。」
単なるキスマークだよ。一直線に全部で3つ。出来栄えに満足して眺めていると、不安そうな顔がこちらを見ている。
「季節柄、虫刺されという言い訳はできないだろうな。フェラを受けるときは電気を消したほうがいい。」
眉間に皺がよるほどに固く閉じられた目蓋。
溺れてしまえばいい、理性を飛ばすほうが楽だろう?どうしてそう怖がるのだ。快感を求める心に忠実になれば理性など簡単に崩れ去る。
もう少し焦らしてもいいが、今日は時間に限りがある。勃起を根元 まで飲み込み、喉の奥に迎い入れると、ひときわ高い嬌声が漏れ出した。
「ああ・・あっ・・・。」
感じ入った声は渇望の証だった。我慢に我慢を重ね、記憶に残る快楽に引きずられながらの毎日だったはずだ。女を抱いたかどうかはどうでもいい事。
抱かれる自分を何度も想像しただろう、それだけでいい。
僅かの抵抗はここまでだった。快感を追う事に切り替えたらしい和泉の指が髪をまさぐる。熱い指と手のひら。
それを感じると急に切なく愛おしい想いが身体を駆け抜けた。ペニスから唇を離し、貪るようにキスをする。不満のような呻きが漏れたが、かまわず舌を捻じ込んだ。
強引なキスを仕掛けながらローションをペニスにぬりたくる。舌で咥内をまさぐり、指でペニスを扱く。
和泉の身体から完全に力が抜け、背中に腕が回された。
密着した身体の下から感じるのは確実に熱くなっている温度。足をからめ押し付けられる下半身は指の動きをもっともっととせがんでいる。
背中にまわっていた手が肩口のあたりをギュウと握り、まるで挿入の時にする律動のように腰を振っている和泉の口から唾液がこぼれた。唾液をなめあげ、べとついた唇で乳首を挟み込めば、喘ぎ声が一段と大きく変わる。
「あ・・あ・・も・・あ・・・いく・・・・せい・・・・いちゃう・・・あああ・・・」
腹筋が引き攣れ、握ったペニスが固く張りだす。親指でカリから先端にかけて強く刺激を与えるとふくれたペニスがビクリと震えた。
「ああああ・・・・あ・・・。」
勢いよく飛び出した白濁が腹の上に散る。結構な量を迸らせている姿にいいようのない満足感が沸きあがってきた。
溜め込んでいたわけか・・・。かわいい、実にかわいい。
頬に手を添えて唇を寄せれば、すこし口をあけて迎えようとする。半分開いた目蓋の向こうの瞳は濡れていた。上気した頬と汗ばむ額、荒い呼吸。
こうして陥落した姿を見るのは最高の瞬間だ。
射精後のけだるさに全身が覆われるとともに、力を失ったペニスがダラリと横たわりはじめた。
今日はこれで終わりだと?
まさか、そんなはずがない。
枕の下からコックリングを取り出し、装着をはじめる。最初は手間取るが覚えてしまえばなんということはない。本当のことを言えば陰毛が邪魔でカットしたいくらいだが、さすがにそれはまずい。和泉の日常生活に支障をきたすことになる。
・・・毛の状態が元通りになるまでの間、家族の前で裸になれない生活を強いるのもいいかもしれない。一緒に風呂にはいってくれなくなった父親、性的接触を拒み続ける夫。
そそられるが、少々可哀想だな。
「・・なん?」
「より気持ちよくなれるように工夫をほどこしているだけだ。」
「きつ・・・。」
「そのとおり。まさかこれで終わりだと思ったわけじゃないだろうな。」
和泉の両手をシーツに押し付けて上から見下ろした。瞳がゆれて光っている・・・綺麗だと思った。
「俺の物だという実感をまだ貰っていない。まだ、ここに挿れていない。」
後孔をつつくと、また瞼が閉じられた。
身体の力は抜けたままだし、熱にうかされたような半開きの唇が誘っているように見える。
「時間ギリギリまで和泉を貪るから覚悟したほうがいい。」
返事をまたずに唇を塞いだ。
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