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それって媚……編 1 ラブラブ夫婦の愛の巣へ

 ブライダル用のシューズブランド、パッセッジョ。  今年の売上は右肩上がり。このご時世、あっちもこっちも材料費の値上げと、それに反比例するように落ち込み続ける顧客の消費意欲。どの企業も売上の伸び悩みに、ヒーヒーぜーぜーな昨今。  そんな日本経済の中でのこの業績は属している同業者のみならず、他業種、他業界からも注視され、その経営戦略において大注目されている。 「……なるほど」  そんな記事を経済系の雑誌で読んで、ふむふむと分かったかのように頷いてみせた。 「なるほどねぇ」 「お前、絶対にわかってないだろ」 「! 千尋さん!」 「なに読んでんだ?」 「んもー! 何を読んでるのかわからないうちに、わかってないって決めつけないでください!」 「この前、俺が受けたインタビューのか。今日が発売日だったんだな」  お風呂から上がった千尋さんがまだ濡れ髪のままベッドの端に腰を下ろし、俺の読んでいた雑誌の表紙に目をやった。  買ってきたばかりの経済誌には今急成長著しいムトウブライダルの社長、千尋さんの写真が載って、インタビューも掲載されている。真面目な顔をして、顔の前で手を組んで、何か語りかけてるような瞬間をパシャリ。インタビューの内容は……まぁ……まぁまぁ……理解できて……まぁ。  でも、この写真の、やっぱりプロが撮ると違うよね。めちゃくちゃカッコイイ。これ、経済誌じゃなくて、ファッション誌とか女性向け雑誌とかに送り付けたら、すごいことになるんじゃないかな。  だって、ほら、ホント、今だって、髪の毛が濡れてるだけで絵になるって、すごいよ。 「んもー……髪ちゃんと乾かしました? まだ、中のほう濡れてません? このままじゃ風邪引きます」  そんな人が俺の旦那様っていうのがもっとすごいけど。  そんな人の髪に無遠慮で触れて、ちょっとお小言言えちゃうっていうのもすごいし。いつもはこの写真の中と同じ、キリリと凛々しい表情をしている千尋さんが俺にだけはたくさん笑ってくれるのも、ものすごく、すごい。  すごいことが多くてドキドキする。  いまだにそんな人と夫婦でいることにドキドキしながら、社長が風邪引いちゃったら大変でしょう? って、千尋さんが首にかけていたバスタオルで髪を拭って。 「大丈夫だ」 「……」  髪をちゃんと拭ってあげたかったのに。 「どうせまたシャワーを浴びることになるから」 「ぇ? ……ン」  バスタオルはベッドサイドにある小さなテーブルに読みかけだった雑誌と一緒に置かれてしまった。 「あっ……ン」 「環」 「……ン」  服を捲り上げられて、いつも不敵に微笑む千尋さんの唇が胸にくっついた小さな粒を――。 「あぁっン」  昨日も愛でられた乳首をキュッと唇で咥えられただけで、おかしな声が溢れてしまう。 「ン……」 「環」 「んんんっ」  その声がはしたなくて、慌てて手の甲で口を抑えると、覆い被さった千尋さんがその口を抑えてる俺の掌にキスをした。  手を挟んでキスをした。 「可愛いな……声、我慢して」  可愛い、かな。 「環」 「ン……ん」  その手をどかされて、ベッドに縫い付けるように千尋さんの手に捕まった。この人の重みを感じながら、深く深く口付けられて、舌先から蕩けてしまいそうになる。 「……ン」  優しいキスに翻弄されながら、肌を弄ってくれる手が、指先が下へと降りていって。 「あぁっ!」  前を握って、扱かれただけで腰が跳ねてしまうんだ。  気持ち良くて、すぐにでも達してしまいそうで、千尋さんの腕にしがみついた。 「あっ……ダメ、千尋、さんっ」  イッちゃう。 「くぅ……ン」  なのに、千尋さんの手は俺のを包み込んで上下に扱くのをやめてくれない。彼の長くてかっこいい指が俺の、こぼしちゃうカウパーで濡れてしまう。くちゅくちゅって濡れた音がして、それがたまらなく恥ずかしくて。 「あっ……千尋さんっ」  きゅぅってお腹の辺りが締め付けられるように切なくなるんだ。痛いんじゃなくて、なんていうかさ。 「あ、あ、ダメ、千尋さん」  お腹のとこ、でももう少し奥のとこ。千尋さんのだけが届く奥の深いとこ。  変、だよね。  気持ちよくしてもらってるのは前のところなのに、前をいじってもらうと、もっと気持ち良くなりたいってウズウズしだすのは違うとこ。 「あっ……千尋、さん」  奥のとこ。 「あっあぁ……」  腕にしがみついていた俺の欲しいものを知っている千尋さんが、俺ので濡れてしまった指で後ろの孔を撫でてくれる。 「ふぅ……んんんっ」  ゾクゾクって、快感が背中を撫でて、尾骶骨の辺りがチリチリするんだ。 「あぁっ」  指が入ってくるとたまらなくて。 「あ、あ、あ」  枕にぎゅううううって抱き付きながら、後ろをほぐしてくれる指先をキュウキュウ締め付けてしまう。ウズウズしていたそこは長い指に何度も擦られて。 「やぁっ……」  丸まって気持ち良さに翻弄されまくっていた俺の肩を千尋さんが小さく噛んで、そこにキスマークをつけてくれた。 「あっ……ン」 「そろそろいいか?」 「……ぁっ」  来てくれる。 「あぁっ」  太くて、硬くて。 「っ、環」 「あぁぁっ」  千尋さんの熱いのが。 「あ、あ、ダメっ……千尋、さんっ」  その熱いので身体の一番奥まで埋め尽くされただけでもう満たされてしまう。 「環」 「あ、あ、あ、あぁあっ」  抱きつくと、力強い腕がしっかりと受け止めてくれて、その腕に自分からもしがみつきながら。 「あっ……イク、イッちゃう」  達してしまう俺の髪に千尋さんがキスをしてくれて、そのことにも俺はまたきゅうって切なくなっていた。

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