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第29話《Backstage》

■  やった。殺ってやった。ついに殺ったのだと青年はマンション内の自室に入るなり、狂喜乱舞した。  これで青年を邪魔していた存在は消えた。ベッドへとダイブし、仰向けになった青年は今日一日の行動を思い起こした。  抜かりはないはずだ。変装も完璧だった。例え人に見られていたとしても、こちらには完璧すぎるアリバイもある。例え警察が来ても捕まることはない。完全犯罪だ。 「ククク……アハハハ! 完璧じゃん!」  あの時の光景が鮮明によみがえる。全身を覆い被さるように、パイプは上手く目標へと倒れていった。  うめき声も上げられない程の衝撃が襲ったはずだ。大量の血が地面に流れて来た時には、達成感で興奮したくらいだ。 「あれはさすがに死んでるよな」  かなりの出血量だったから、普通ならば死んでいる。しかしちゃんと脈をとって確かめたわけではない。 「……」  途端に青年は焦った。ベッドから勢いよく起き上がると、頭を掻きむしる。  万が一命が助かっていれば、何処かの病院に入院している。あの青年に運が味方していれば、早い段階で誰かに発見されて病院に運ばれているだろう。どこの病院か確かめたいが、今はいずれの病院でも入院患者の情報は教えてくれない。例え家族でも電話口では教えることはない。 「でもあんだけ血が出たんだ。絶対死んでる」  きっと今日見つかっていれば、夕方から夜にかけてのニュースでやるだろう。青年はテレビをつけて、情報を見逃すまいとテレビにかじりついた。 「生きてたらマジめんどくせぇな。もし生きてたら、今度はあのお綺麗な顔をグチャグチャにしてやるか」  あの美し過ぎる顔を、最初からめちゃくちゃにしておけば良かったと、今更ながら後悔し始めた。  けどもう、極力目立った行動は避けなければ、このマンションの主に迷惑をかけてしまう。怪しまれないように普通に生活もしなければならない。  だが自分は絶対に捕まらない自信がある青年は、この先は愛する須藤 仁を独り占め出来るのだと有頂天にもなっていた──。

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