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第38話《Background》2

 朱龍会(しゅりゅうかい)と言えば、黒衿会(こくえかい)と並ぶ程の大きな組織だ。しかし、ヤクザがどこと繋がっていようが須藤にとってはどうでもいいことだ。だがそこに佑月が絡むと僅かな情報でも欲しい。 「はい。朱龍会の若頭、桐谷 豪(きりたにごう)と正親は義兄弟の仲でした」 「義兄弟?」 「あ、義兄弟とは言っても、日本のヤクザ特有の〝家族〟という意味ではなく、彼らは幼少の頃、親の再婚で兄弟となったようです。しかし、今はまた親の離婚で兄弟という関係はありませんが」 「仲は続いているということか」 「はい」  泰然は頷いてからパソコンを操作し、ある画面を再び須藤へと見せる。  画面に映っているのは支倉 恭平一人の写真。そしてもう一人の写真。須藤は並ぶ写真の画像を見て、僅かに眉根を寄せる。 「これですよ〝面白い事〟は」 「なんだ?」  一見しただけでは、ただの人物写真と言えるもの。勿体ぶらずに早く言えとばかりに、須藤は泰然を一瞥した。 「これはごく一部の人間しか知らない事です」 「なるほどな」  泰然から詳細を語られ、須藤は頷きながらも相変わらずの泰然の情報網の広さを思い知る。  あらゆる業界、企業に潜り込んでいる人間がどれだけいるのか。しかしそのお陰で須藤にも必要な情報が難なくと手に入るのだ。 「須藤さん、何かお手伝い出来る事があれば、何でも仰って下さい」 「お前も好きだな」 「ええ。こういう美しい青年を見ると高揚するんですよ」 「悪趣味な奴だ……」  須藤が僅かに鼻で笑うのを、泰然はニッコリと笑んだ。  泰然は美しい人間を見ると、バラしたくなる性癖を持っている。あのリアンの末路も五体満足ではないはずだ。  そして佑月のことも。あれほどの美しい人間、須藤の恋人でなければ、恐らく泰然なら放っておくことはなかっただろう。  泰然とは今はお互いに善きビジネスパートナーと言えるが、須藤は泰然には全幅の信頼を寄せているわけではない。裏社会では裏切りなど当然といった世界だからだ。  その須藤が心底から〝信用〟しているのは側近である真山や滝川。そして佑月だけだ。佑月の場合、信頼とは少し違うのだろうが、唯一〝自分〟を解放できる人間なのだ。  叶うなら、佑月には全てとは言わないでも、須藤と過ごした日々を、心を通わせていった日々を思い出して欲しい。  それは、須藤の心の奥底にしまい込んだ願いであった──。

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