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※第83話

「や、やめてください……こんなの、おかしい」  桃色の小さな突起を、須藤の指がピンピンと何度も弾いてくる。その度に佑月の身体はビクビクと震えてしまう。そして何より、腰に覚えのある感覚が芽生え始めていた。 (ヤバい……本当にヤバい……)  こんなところで勃たせている事を知られたら、本当にシャレで済まなくなる。きっと気持ち悪いと思われて、軽蔑されるに決まっている。 「須藤さん……本当にやめっ」 「おかしいと思うなら、本当にやめて欲しいなら、俺を殴ってでも抵抗すればいいんだ。だが俺は俺のやりたいようにする」 「なんで……なんでこんなこと……あっ!」  腰に巻いていたフェイスタオルが奪われてしまう。そして目に入った自身のモノに、佑月は羞恥よりもショックを受けた。  緩く勃ちあがりつつある自分の性器。たかが胸を弄られただけで、本当に反応している事を、まざまざと視覚からも認識させられた衝撃は、計り知れないものだった。 「佑月、これは当然の反応だ。だからそんな顔するな」  須藤が鏡越しから佑月を見つめ、宥めるように耳元で優しく囁く。 「当然の……反応?」 「あぁ」  漆黒の目が妖しく煌めく。その目に佑月は再び囚われたように、目が離せなくなっていた。  こんな事はおかしいと、頭の中では警告が鳴り響いている。須藤の言う通りに、暴れてでも抵抗すればいいのだ。それなのに、そうしたいのに、なぜこの身体は言う事をきかないのか。 「一ヶ月近くも入院してたんだ。溜まってるのもあるだろうしな。溜まったものはちゃんと出さないとだろ?」  須藤はそう言って、何の躊躇いもなく佑月の半勃ちになったモノを掴んだ。 「なっ!? え……す、須藤さん!」 「抜くだけだ」 「抜くだけって……ひっ……く……」  鈴口を親指でグリグリとされ、強い刺激に佑月の身体は跳ね上がる。昔付き合っていた彼女でさえも、こんな風に触れてくることはなかった。  大きな手の平の摩擦は、佑月のウブな性器にはたまらない刺激になっていた。 「でも……これは……やっぱりおかしい」 「抜くだけなんだ。そんな大袈裟に考えなくていい」  「でも……んっ……」  佑月の両手は須藤の右手を掴んで剥がそうとしているが、まるで力が入っていない。形だけの抵抗にしかなっていなかった。  どうしても気持ちいいが(まさ)ってしまう。いま途中で止められた方が辛いと、今の佑月の頭の中は快感の波に飲まれてしまっている。抜け出すには相当のパワーがいる。そして何より、須藤が引いていない事が、佑月の中で大きな安堵が生まれていた。 「そうだ。もっと快感に素直になれ」  これは決して恥ずかしいことではない。男同士だが、学生時代でも抜き合う者はいた。それの延長だと思えばいい。須藤の言葉にも乗じて、佑月は自分に暗示をかけていた。 「ふ……ん……」  バスルームの中は音がよく響く。クチュクチュと粘着質な音がやけに耳について、佑月は耳を覆いたくなった。しかしその前に自分の声がもれてしまいそうで、佑月は必死に口元を手で覆っていた。

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