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※第84話

「俺しかいないんだ。声は我慢するな」 (貴方がいるから、余計にだよ!!)  佑月の必死の抵抗に、須藤はあの手この手で責めてくるようになった。完全に洗浄行為から逸脱している。須藤の手は、桃色の頂を弾いたり引っ掻いたりしながら、ペニスも大きな手の平で亀頭を撫で回す。あまりの刺激の強さに佑月は須藤の手を外そうと、口元から手を離した。 「あ……いや……須藤さん、やめて……強すぎ」 「こうされるの好きだろ?」  耳元で優しく、かつ甘く囁かれる。しかし何が好きなのか理解する暇もなく、佑月は必死に須藤の手を外そうとする。しかし全く力が入っておらず、何の抵抗にもなっていなかった。 「ぁ……あ……いや……もう……イク……イキそう」  佑月は涙目になりながらも、今や快感を追う事しか頭にない状態だ。こんなに快楽に弱いなども考えている余裕もない。 「ほら、イケ」 「あぁ……くぅ……」  久しぶりに体外へと放出される白濁液。あまりの気持ち良さに、佑月の身体はすっかり弛緩してしまい、須藤へと背中を預けるようにぐったりとした。 「……っ!?」  だが腰に当たるモノに、佑月は驚いて瞬時に須藤から離れた。 「流すぞ」 「へ? あ……で、でも」  須藤がシャワーを佑月にかけ、泡や精液を綺麗に流していく。その間も佑月は須藤の〝状態〟が気にかかり、気もそぞろになっていた。 「あまり身体を温めすぎない程度に出てこい」  そう言って須藤はバスチェアから腰を上げる。その際に佑月は鏡を見ないように、そっと視線を外した。 「あ……ありがとうございます」 「あぁ」  なんに対してのお礼なんだと、佑月は言った後に焦るが、何でもない口調で返事をした須藤は、そのままバスルームから出ていった。その途端に佑月は項垂れるように膝に顔を埋めた。 (待て、落ち着け俺。いや、でも……あれって勃ってたよな……なんで?)  確実に背中へと触れた、熱くて存在感のあるもの。須藤のモノは勃起していた。  性的な触れ方を確かに須藤はした。男の胸など普通は触らないし、躊躇いもなく性器にも触れてきた。だからと言って、佑月に触れただけで勃起などするのか。須藤が例えば男もいける人だと考えても、遊び慣れていそうな男が、相手の身体に触れるだけで反応するものなのか。 「あ……」  そこで佑月は、須藤には恋人がいることを思い出した。すると佑月は先程までの自分の思考に、途端に羞恥を覚えた。  須藤は自ら、佑月の溜まっていたものを、出してやると言っていたではないか。妙なオプションは付いてきたが、須藤は佑月の精だけを解放させると、なんの未練もなくバスルームから出ていった。完璧な平常心を貫いていたように佑月は思った。 「そっか……あれは、疲れてたからだ」  お湯に浸かっている時も、実際須藤は疲れていた。佑月の肩に頭を預けるくらいに。だからあれは所謂、疲れマラというものだったに違いない。 「だったら、本当に申し訳なかったな……」  自分だけがスッキリとし、須藤は勃起したものを解放も出来ずにいた。

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