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第109話

 完全に目が覚めた佑月は途端に青くなった。傍についておきながら、寝てしまっていた。 「須藤……さん」 「ずっと、付いてくれていたんだな」  カーテンから漏れる光に、夜が明けているのだと知る。須藤が上体を起こして、佑月を心配そうに見つめていた。  須藤の顔色は良くなった方だ。人知れず佑月は安堵の息をつく。 「すみません……付いておきながら寝てしまってました」 「……いや、すまなかったな。ありがとう」 「いえ……」  須藤が僅かに嬉しそうに微笑む。佑月の心臓がドキリと僅かに跳ねる。一体なんの胸の鼓動なのか。不思議に思いながらも、まだ思うように須藤の顔をゆっくりと見ることが出来ず、佑月は直ぐに下を向いてしまう。 「俺の方こそすみませんでした。正直、まだ須藤さんのことは怒ってます。でも体調の変化に気づかない程に、須藤さんのことを無視していたことは反省してます」 「佑月が反省することは何一つない」  柔らかな声音がそう告げる。佑月は顔を上げた。  須藤の言う通り、大半は須藤が悪い。だが今は素直に謝ることが出来ないが、言いすぎた事や、佑月にも僅かとはいえ、落ち度もあった。全面的に須藤を責めるわけにはいかなかった。 「今日から俺が栄養のある物を作ります。だから作った物はちゃんと食べてください。そして今日の仕事は休んでください。分かりましたね?」  かなり偉そうな口調になってしまったが、今はこれくらい言わないと須藤は絶対に仕事へ行くだろう。 「あぁ、分かった」  須藤の返事に佑月は半ばホッとしながら頷いた。  佑月は朝食の準備をしようと、椅子から腰を上げて部屋を出ようとした。 「佑月」  背中に須藤の声がかかり、佑月は振り返る。顔色は良くなったとはいえ、やはりまだ万全な状態とは言えなかった。須藤にはまだ少しの翳りがある。きっとメンタルの疲弊のせいだろう。 「本当にすまなかった」  真摯な目とぶつかり、佑月は咄嗟に目を逸らしてしまった。 「……朝食を作ってきます。少し待っててください」  須藤の謝罪を流してしまったのは、まだどうしても佑月の中では燻っているものがあり、素直に受け止められなかったせいだ。  でも須藤は深く反省している。村上に対しての反省ではないが、須藤のメンタルの回復のためには、佑月も無視だけはしないようにしようと決意した。  胃に負担がかからないようにと、通常より煮立たせて柔らかくした雑炊を作った。ガラスコップに水を注いでトレイに乗せると、再び須藤の部屋へと戻った。 「それ食べたら、動けるようでしたら、お湯を沸かしておきますのでお風呂へどうぞ。食べ終わった物はそちらに置いといてください」  ナイトテーブルに視線を向けて言うと、須藤は「分かった。ありがとう」と言う。佑月は軽く頭を下げると、直ぐに部屋を出た。 「ふぅ……なんか凄く疲れるな」  思わずぼやきが出てしまう。佑月は自室に戻ると、陸斗のスマホへと電話をかけた。

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