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第114話

「少し買いだめをしておこうと思って。なるべく買い出しへ行く回数を減らした方がいいですしね。冷蔵庫は凄く大きな物だから、冷凍出来るものは冷凍して保管したら、余裕で入りますし」  滝川は感心したように頷いてから、直ぐにキリッとした眉が下がってしまった。 「色々と制限がつくような事で、申し訳ございません」 「滝川さんが謝られることではないですよ! こっちも色々と迷惑掛けてるんですから。では、会計済ませてきますね」  佑月は少し混んでいるレジに並ぶ。滝川はもちろん佑月の傍に控えている。会計を終えて外に出たタイミングで、滝川がスマホを耳に当てた。 「お疲れ様です。滝川です。はい、はい……ただ今戻ります。申し訳ございませんっ」  滝川がかなり恐縮したように話す。滝川が畏まる相手は須藤しかいない。通話を終えた滝川に佑月は頭を下げた。 「すみません。須藤さん寝てらっしゃったので、黙って出てしまいました」 「そうだったんですね。成海さんのお電話の方にもご連絡なさったようですが」 「え?」  滝川がすかさず買い物袋を全て持ってくれたため、佑月はジーンズのポケットからスマホを抜いた。着歴に、須藤からの着信が三回あった。 「……本当ですね。音を消してたので気づかなかったです。すみません、急ぎましょうか……」 「そうですね。かなり心配なさってましたので」  スーパーの駐車場に止めていたBMWに乗り込むと、滝川は直ぐに車を発進させた。  スーパーから十分と掛からずに着き、駐車場に止められた車から佑月は降りて、買い物袋を取り出す。 「滝川さん、本当にお疲れのところ、お付き合い下さりありがとうございました。ここでもう大丈夫です」  車から降りてくる滝川に佑月は慌てて言う。 「いえ、玄関まで参ります」 「……分かりました」  きっと須藤と顔を合わせるつもりでいるのだろう。後で滝川が叱責を受けないようにするためにも、付いて来てくれる方がいいのかもしれない。  エレベーターが最上階につき、玄関ドアを開けると、佑月は驚く間もなく何か大きなものに包まれていた。 「心配させるな……」  佑月の頭も抱え込むように抱きしめられ、苦しげな声が、頭上に顔を埋めた須藤から落ちてくる。 「あ……すみません……」  たかが少し出ていただけでオーバーなと、前なら思っていただろう。でも今回で色々学んだ佑月は、心配かけてしまった事に、申し訳なく思った。それに何よりも、須藤が本当に心配していた事が佑月にも伝わったからだ。少し速い須藤の鼓動が佑月にも伝わる。 「須藤さん寝てらっしゃったので、起こしたくなかったんです。でも……直ぐに帰ってくるつもりだったとは言え……メッセージくらい残しておくべきでした。本当にごめんなさい」 「頼むから今度からはそうしてくれ」  須藤の抱きしめる力が強くなる。佑月は腕の中でこくりと頷いた。

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